多摩動物公園「アジアゾウのすむ谷」では、ときどきアジアゾウのように大きな油圧ショベルやホイールローダー、といった「働く車」を見ることがあります。まるで工事をしているようですが、これも大切な飼育作業の一つです。今回はこれら「働く車」の活躍をご紹介します。
「アジアゾウのすむ谷」の働く車たち
左から油圧ショベル、トラクター、ホイールローダー
1.油圧ショベル
油圧ショベルは地面を深く掘るのが得意です。「アジアゾウのすむ谷」ではゾウの足への負担を減らすため、屋内エリアに柔らかい砂が約2メートル敷き詰めてあります。しかし体重3トンを超すゾウに踏み固められると、特に湿度の高い夏などは湿って固い土のような状態になります。このまま放置すると、菌が繁殖し臭いも出てきます。これを防ぐため、固くなった砂を油圧ショベルで深く掘り返し、ゾウがあまり踏まない場所に移動させ乾かします。こうすることで、ゾウに常に清潔で柔らかい砂を使ってもらうことができます。
2.トラクター
「アジアゾウのすむ谷」で働くトラクターには「ロータリー」と呼ばれる機械がついています。このロータリーの爪が回転することで地面を掘って耕すことができます。トラクターを使う目的は、油圧ショベルと似ていて、固い砂を耕して柔らかい状態にすることです。油圧ショベルと比べて、トラクターは広い面積を一気に耕すことができます。一方油圧ショベルほど深く砂を掘ることはできません。砂の状態や面積に応じて2つの「働く車」を使い分けています。
トラクターの後ろについている「ロータリー」
爪(白矢印)が回転し地面を耕す
3.ホイールローダー
ホイールローダーは大量の砂や土を運ぶことができます。アジアゾウは日除けや寄生虫予防のため、砂浴びを頻繁におこないます。このため「アジアゾウのすむ谷」には屋内にも屋外にも、大きな砂山があります。また屋内の砂山はゾウが横になって休むときに、体を横たえる助けとなります(
こちらの記事をご覧ください)。砂山は、ゾウがダイナミックな砂浴びをしたり、体を横たえたりするときに削れるため、すぐに小さくなってしまいます。そんなときはホイールローダーの出番で、砂を運び、山を作り直します。ゾウ本来の行動をとってもらうため、ホイールローダーは不可欠です。
ホイールローダーで砂山を作り直すようす
大きくて力の強いアジアゾウの飼育作業は、人力では難しい場面があります。そういったときはこうした「働く車」の力を借りて、ゾウに快適な環境を整えています。ご来園の際に地面をよく見てみると、ゾウの足跡の隣にタイヤや走行用ベルトの跡が残っているかもしれません。そんな時はこれら「働く車」の仕事ぶりを思い浮かべながら、ゾウの生き生きとした姿を楽しんでいただければと思います。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 松本〕
(2023年11月10日)