突然ですが問題です。写真をご覧ください。砂地に動物の「痕跡」があります。なんの動物でしょう?
砂地の上にへこんだような跡がある
わからない方のためにヒントです。痕跡の輪郭を赤い線でなぞってみました。
ヒント:痕跡をなぞってみると……
いかがでしょうか。正解はアジアゾウです。
多摩動物公園では3頭のアジアゾウを飼育しています。そのうちの1頭、国内最高齢の「アヌーラ」(オス、推定67歳)は現在、工事中の新アジアゾウ舎に一足早く引っ越し、砂が敷き詰められた広い屋内放飼場で過ごしています(記事「
新アジアゾウ舎でくらすアヌーラの近況」)。
上の写真は新しいアジアゾウ舎でアヌーラが夜、左半身を下にして寝ていた跡を撮影したものです。赤線はアヌーラの頭と鼻、そして前肢です。
野生のおとなのゾウは一日に4~5時間休息をとりますが、横になって寝ることはありません。立ったまま、木などに寄りかかってまどろむ程度です。一方、飼育下のゾウは、おとなになっても夜、横になって寝ます。一度横になって寝ると、起きるまで数十分~2時間はそのままです。
目覚めて起き上がるとえさを食べたり、立ったまままどろんだりします。そして、しばらくするとまた横になって寝ます。起きてからふたたび横になるときは、体重による臓器にへの負担がかたよらないよう、そのたびごとに右半身と左半身を交互に下にして寝ます。立ってまどろむときは、長い鼻を地面にだらりと垂らしたり、柵にかけて休んだりします。
夜、横になって寝るアヌーラ 左:左半身を下にしている 右:右半身を下にしている
動物園で飼育するゾウの夜のようすは、もちろん個体や飼育環境によってさまざまですが、アヌーラの場合、2017年に新しいアジアゾウ舎に引っ越した後、夜横になって寝るようになったのは2週間ほど経ってからです。当初は数分間横になるだけでした。その後、横になって寝る時間は徐々に伸び、今では左右それぞれをバランスよく下にしながら、1日に合計2~5時間ほど寝ています。
アヌーラは高齢ですので、えさの消化の具合や水の摂取量、日常的な行動等について注意して観察することが大切ですが、夜間の睡眠の状況についても私たち飼育係は気をつけてチェックしています。
日々の観察やトレーニングでのケアを入念におこないながら、アヌーラのようすをこれからもお伝えしていきたいと思います。
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〔多摩動物公園南園飼育展示係 兒島匠〕
(2020年02月28日)