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アジアゾウ「アヌーラ」の食欲の秋
 └─2019/11/29

 秋といえば「食欲の秋」。おいしい物の食べ過ぎで体重を気にされている方もいらっしゃるかもしれません。本格的な冬の寒さに向かうこの時期に食欲が増すのは人間以外の動物でもよく見られる行動です。多摩動物公園のアジアゾウのオス「アヌーラ」もこの時期になると食欲が増しますが、年間の推移は人間とは少し異なっています。

 夏の暑さがやわらぐ9月〜10月ごろ、アヌーラは「ムスト」と呼ばれる時期を迎えます。ムストはおとなのオスのゾウに見られる生理現象で、個体により程度は異なりますが、ムストの時期は食欲がガクっと減退します。アヌーラもムストに入ると、食欲の減退とともに目に見えて痩せていきます。


体重計に乗るアヌーラ

 2017年10月、アヌーラは新しいアジアゾウ舎へ移動したため(お知らせ1お知らせ2)、アヌーラの体重を定期的に計ることができるようになりました(新アジアゾウ舎は現在工事中のため非公開です)。

 私はアヌーラの飼育担当になって7年目になります。ムストの時期にどれくらい体重が減少しているのかは私の長年の疑問でしたが、新施設で推移をしっかり計ることができました。


アヌーラの体重推移(2019年)

 ムストでない時期のアヌーラの体重はだいたい3,800~3,900キロ推移しています。今年もムストに入ると食欲は減り、体重も計るたびに減っています(どこまで減るのか心配になるほどでした……)。ムスト終盤の10月下旬、ついに体重は3,600kgを切ってしまいました。おおよそですが、ムストでない時から200~300キロ近い体重が減ったことになります。

 ムストのときに食欲が落ちるといっても、まったく食べないわけではなく、毎日数十キロのえさを食べているのですが……(ちなみにムスト以外の時期は1日に80キロ近いえさを食べます)。この体重の振れ幅も驚きですが、ゾウが大きな体を維持する事の大変さもよくわかります。大きな体をもつゾウのスケールには改めて驚かされました。

 今年(2019年)も11月に入り、ムストが明けたアヌーラは徐々に食欲と体重が増えつつあります。この原稿を書いている11月中旬、3,800kg近くまで戻ってきました。たった1か月で200キロ近く増加した事になります。

 来年1月には推定67歳を迎える高齢のアヌーラ。少し遅れてきた「食欲の秋」を迎え、体型も元通りになっていくアヌーラを見て、ほっとした気持ちになりました。新アジアゾウ舎完成までアヌーラは直接ご覧いただくことができませんが、新施設で元気に過ごしています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 伊藤達也〕

(2019年11月29日)


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