ニュース
飼育係の工夫
 └─ 2023/02/17
 アジアゾウ舎の近くを歩いていると「ガシャン! ガシャン!」とものすごい音がなっているのを聞いたことがありませんか? これはゾウが暴れているわけではなく、アジアゾウの「ヴィドゥラ」が退屈しないようにと担当者が手づくりしたフィーダー(給餌機)を夢中で使用している音です!


【動画】ヴィドゥラがフィーダーを使用しているようす

 本来、野生のゾウは睡眠以外の一日の大半の時間を、食物の探索や採食に費やします。しかし、動物園では限られたスペースで生活していかなければならないため、えさを探し、食べる時間がどうしても短くなってしまいます。

 常に決まった場所に置かれた食べやすいえさを、ゾウはすぐに見つけて食べてしまい、やることがなくて暇になったゾウは、長時間頭を振り続けるなどの常同行動や扉にアタックするなどの異常行動をするようになります。これらの行動はストレスからも引き起こされると考えられています。そこで、担当者はゾウがえさを食べるのに費やす時間をのばすためにさまざまな工夫をしています。


アヌーラの使用しているフィーダーなど

 フィーダーはゾウの採食の時間をのばすための道具のひとつです。簡単にえさが取れてはすぐに終わってしまうし、難しすぎて食べられず、ゾウが諦めてしまうのもよくありません。また、個体によって体の大きさ、鼻の太さが違います。

 そこで、担当者は工具を使い、板や漁業用のブイなどを加工してそれぞれにあったフィーダーを手づくりしています。わざと鼻が通れないような穴を開けたり、簡単に取れないような構造にしたりすることで、ゾウが頭を使い時間をかけてえさを食べられるようにしています。

 また、道具を使うこと以外でも、地面にニンジンを埋めて探させたり、高い位置にえさを吊るして鼻を上げないと取れなくしたりなどの工夫により、ゾウが本来野生でする行動を引き出せるようにしています。

 ゾウが穴を掘ったり、高い所のえさを時間をかけて食べていたりする姿を見ると、手間暇をかけてやったかいがあったなと感じます。しかし、慣れてくると簡単にえさを取れるようになってしまうので、担当者の工夫に終わりはありません。飼育係にとって、想像力も重要な能力のようです。

 ゾウだけではなく、ゾウ舎のいろいろな場所をよく見てみると、担当者がさまざまな場所に設置したえさを発見したり、運がよければ担当者がえさを準備している所も見られたりするかもしれません。ぜひ、ゾウ舎にお越しの際はいろいろ探してみてください!

〔多摩動物公園南園飼育展示1係 坂上〕

(2023年02月17日)



ページトップへ