葛西臨海水族園「世界の海」エリア「グレートバリアリーフ」の水槽ではサザナミハゼを展示しています。この魚の見どころは、なんといっても特徴的なえさの食べ方です。

サザナミハゼ
口の中に砂をガバッと含んだ後、エラから砂をポロポロと落とす……こんな行動が水槽内でよく見られるのですが、これがサザナミハゼのえさの食べ方です。これは、砂の中からえさになるものを濾しとり、食べられない砂をエラから捨てているのです。
じつはこの面白い摂餌行動によって水槽内の砂がをきれいになります。そのようすをご紹介しましょう。
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開園前、砂の一部が茶色がかって見える | 閉園後、砂が朝より白く、きれいになっている |
開園前の砂はところどころ茶色に見えます。これは砂に付着したコケです。この水槽ではサンゴのなかまも飼育しており、かなり強い光で水槽を照らしているため、他の水槽に比べてコケが生えやすいのです。壁面やアクリル面は飼育係が毎日きれいに掃除していますが、砂については特に何もしていません。しかし閉園後に水槽をのぞいてみると、砂が朝より白く、きれいになっているのです。
この水槽には、砂の付着物を食べるナマコや貝もいます。「ナマコたちがきれいにしたのでは?」と思うかもしれません。たしかにナマコや貝などは水槽の掃除役として活躍しており、この水槽も例外ではありません。ただし、ナマコたちは動きが遅く、食べるのも早くありません。1日だけでこの広い水槽内をきれいにできるとはとても思えません。
しかし、サザナミハゼの摂餌行動を撮影した動画をごらんください。次から次へと砂を口に入れています
【動画:サザナミハゼの食事風景】
じつは、特別にサザナミハゼのためにブラインシュリンプと呼ばれる小型のプランクトンを砂の中に埋めてあるのです(上の写真の岩の手前の一帯)。事前に埋めているのはわれわれ飼育係。入れた付近だけ砂がきれいになっているので、サザナミハゼがきれいにしたとわかるわけです。ただし、サザナミハゼが砂に付着したコケを濾しとって食べているのか、それとも砂が撹拌された結果きれいに見えるだけなのかどうかは確認できていません。
えさは毎日午前と午後に1回ずつ与えています。ご来園の際はえさを食べている姿を観察し、帰る前にもう一度水槽を確認してみてください。もしかしたら砂がきれいになっているかもしれません……。
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〔葛西臨海水族園飼育展示係 加茂耕太朗〕
(2016年05月13日)