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こみすけの深海調査航海見聞録、その弐 
 └─葛西  2012/01/20

 先週に引き続き、こみすけの深海調査航海見聞録その弐です。

その壱

 いよいよ深海調査が始まりました。「かいこう7000 II」が巨大なクレーンで海に下ろされ、ゆっくりと海の中へ沈んでいきます。水中でのようすは、搭載したカメラが撮影したものを、操縦席のモニターで見ることができます。

 水深1000メートルの海底に到達すると、そこには一面砂原のような寂しげな光景が広がっていました。ライトが届かない暗闇は、見ていると引きずり込まれそうでとても不気味です。しかしそこから何が現れるのかワクワクします。

 今回の航海の目的の一つは、クジラの骨に集まってくる「鯨骨生物群集」の調査です。「鯨骨生物群集」について説明すると長くなってしまうので、アメケンの深海調査航海リポートその四をご覧ください。

「アメケンの深海調査航海リポート、その四」(2008年07月25日)

 海底に設置しておいたクジラの骨を見に行くと、真っ白なシンカイコシオリエビが骨に集まっていました。なにかを食べているようなしぐさをしていますが、肉が残っているようには見えません。彼らはいったい何を食べているのでしょうか。その後ろにはミノエビも見えます。鯨骨の周辺は、そこに向かうまでのほかの場所に比べるとやはり生物の数が多く、鯨骨が深海の生物の重要な糧となっているのを実感しました。

 また、今回は鯨骨の周辺だけではなく、もっと広い範囲で調査をおこないました。鯨骨周辺ほど生物の数は多くありませんが、いろいろな種類の生物が目の前を通って行きます。透明なタチウオのような魚や尾びれが異様に長い魚、頭にひれのあるタコ、海底から突き出して立っているガラスカイメン、砂の上にぽつんとある石につかまっているウミシダ、それにつかまっているエビも見えます。さらには左右の腹びれと尾びれで海底に立つ姿が独特なサンキャクウオまで現れました。これまで図鑑などでしか見ることのなかった深海の生き物が動いているところを見られたのには感動しました。ただ、ほとんどの生き物は一瞬しか見ることができなかったので、正確な名前がわかったのは一部の生き物だけでした。

 深海での任務を無事に終え、「かいこう7000 II」が海底から浮上してきました。この日の深海調査は終わりですが、船上ではこれから研究者たちが得られたデータやサンプルを分析する作業で大忙しです。今回の調査でも何か新発見があるかもしれません。
 深海調査航海もあと残りわずかとなりました。このリポートはもう少し続きます。次回をご期待ください。

写真上:「かいこう7000 II」の出発
写真中:モニターに映る深海の海底
写真下:クジラの骨に集まるシンカイコシオリエビ
【写真提供:独立行政法人海洋研究機構(JAMSTEC)】

〔葛西臨海水族園調査係 小味亮介〕

(2012年01月20日)



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