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国際ホッキョクグマの日──イコロとデアでの人工授精の試み
 └─2024/02/27
 2月27日は「国際ホッキョクグマの日」(International Polar Bear Day)です。

 この日に合わせ、昨年度はこちらで、国内全体で繁殖に取り組んでいる現状や、当園の取組みについてお伝えしてきました。

 これまでの取り組みに加え、今年は北海道大学とのホッキョクグマ繁殖に関する共同研究にもとづき、「イコロ」(オス)と「デア」(メス)の人工授精を実施しました。

 人工授精は、メスの発情に合わせて実施します。これまでの2頭のようすから、イコロはデアの発情を正しく察知してマウント(オスがメスに乗り交尾の体勢になること)をしていると推察されました。そこで、マウントを確認してから数日以内に人工授精を実施することを目指しました。

 2024年1月13日、デアの近くに行きたがる、鼻を鳴らしながら周囲のにおいを入念に嗅ぐなど、イコロに繁殖期特有の行動が強まったため2頭を同居させたところ、1月14日にマウントが2回見られました。

 翌15日にはマウントはないものの、イコロのデアへの関心は高いままでした。2頭の行動変化と、14日に実施した採血時のホルモン値をもとに北海道大学と時期を検討し、1月16日に人工授精を実施しました。


ペアリングのようす

 人工授精当日、まずイコロに麻酔をかけて精子を採取し、次にデアに麻酔をかけて精子を注入しました。処置はそれぞれ1時間ほどで無事に終了し、麻酔から覚めた後はふだんと変わらない動きや採食を確認できました。その後は2頭とも非発情期のようすに戻ったため、2頭をふたたび別々にしました。

 人工授精処置が無事に終了したからといって、必ずしも妊娠するわけではありません。今後も観察を続け、デアの変化の有無を確認するとともに、出産の可能性を考慮して環境整備やデアの健康管理に尽力していきます。また、妊娠していない場合に備えて同居方法を見直し、人工授精の再実施や他園との協力による個体の入れ替えについても引き続き検討していきます。

 多くの方々が動物園でホッキョクグマを観察することは、生息地である北極の環境の変化を自分のこととして意識するきっかけとなり、二酸化炭素の発生の少ない、環境に配慮された商品を積極的に利用するなど、保護のために行動してくださることに繋がると考えています。

 上野動物園では、野生のホッキョクグマを守っていくためにも、今後も繁殖の取り組みを継続し、国内の動物園でたくさんの方々にホッキョクグマを見ていただく機会を増やしていくよう取り組みを進めていきます。

〔上野動物園東園飼育展示係〕

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