2月27日は「International Polar Bear Day(国際ホッキョクグマの日)」です。地球温暖化の影響で北極の氷が少なくなり、狩りの場所を失いつつあることによって絶滅の危険にあると言われているホッキョクグマの状況を知ってもらうために2005年に制定されました。
今回はこの国際ホッキョクグマの日に合わせて、上野動物園でのホッキョクグマの繁殖に向けた取組みを、2回にわたってご紹介します。
上野動物園では1917年、1918年、1958年に繁殖記録がありますが、子の成長にはいたっていません。ひとつの動物園だけでホッキョクグマを繁殖し展示を維持していくことは難しいため、現在は日本中の動物園で協力して繁殖に取り組んでいます。
現在当園で飼育しているホッキョクグマは、札幌市円山動物園生まれの「イコロ」(オス、14歳)と、イタリアのファザーノサファリ生まれの「デア」(メス、14歳)です。イタリア生まれのデアはこれまで日本で飼育されてきたホッキョクグマとは違う血統のため、国内のホッキョクグマの遺伝的多様性を保つために繁殖が期待されています。そのお相手に選ばれたのが、
2015年に当園にやってきたイコロです。
ホッキョクグマは、通常冬から春にかけてメスに発情期(交尾相手を許容する期間)が来ることで交尾して繁殖します。当園では、野生のホッキョクグマの生活と同様にふだんはオスとメスを分けて管理し、メスの発情期に合わせて同居をおこなっています。
デアの発情期を予測するために、当園では定期的な採血からデアの血中の性ホルモンの変化を測定しています。また、デアの発情期が近くなると、イコロがデアの糞尿の匂いを念入りに嗅ぐようになり、柵越しのデアに対して鼻を鳴らして興奮するようにもなるため、そのようなイコロの行動変化も判断基準として同居を開始します。しかし、発情期に同居したからといってそう簡単に交尾はしてくれません。次回の記事では、これまでのイコロとデアの同居のようすを詳しくお伝えします。
同居中の「イコロ」(左)と「デア」(右)
〔上野動物園東園飼育展示係〕
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