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スバールバルライチョウ飼育の試み──季節逆転と人工授精で冬の繁殖へ
 └─2011/02/04

 鳥類の羽が生えかわることを換羽といいます。鳥の種類によって羽の生えかわる時期や期間は異なりますが、一般的に換羽は、性ホルモンによって影響を受け、繁殖期の終わりとともに始まります。
 屋外で飼育している鳥の繁殖時期は日照時間によって決まるので、換羽も日照時間の影響を受けることになります。

 上野動物園の「日本の鳥」コーナーでは、スバールバルライチョウを展示室、バックヤードともにすべて室内で飼育しています。以前の記事でスバールバルライチョウの生息する北極圏の日照時間に合わせて、飼育施設の照明を6~7月に24時間点灯したことはお伝えしました。

24時間点灯の記事

 室内照明の24時間点灯で白夜と同じ状態にした結果、2010年の5~7月の繁殖期には8羽のメスが200個以上の卵を産みました。しかし、雌雄を同居させたためオスがメスを攻撃したり、産んだ卵のうち有精卵の産卵率が低くなったり、課題が残りました。

 今回は、点灯時間のコントロールだけで冬期に夏を作った場合、換羽、繁殖までいけるのか、人工授精で有精卵を得ることができるか、確認することにしました。

 2010年10月、照明時間を北極圏の4月に合わせて15時間に設定し、12月から2011年1月は白夜の状態(24時間点灯)にしました。その結果、10月中旬から換羽が始まり、11月下旬にはメスが発情し、産卵が始まりました。2羽のメスが合計59個の卵を産みましたが、有精卵は1個しか得ることができませんでした。また、人工授精は11月末から12月末までに9回おこないましたが、採精できたのは2回でした。これは採精や人工授精をおこなった担当者である私の手技が未熟だったためと思われます。

 1つだけ得られた有精卵を孵卵器に入れたところ、2011年1月4日に孵化し、ひなは順調に育っています。
 現在は施設が整っていないため、冬羽のライチョウしか展示していませんが、将来的には、夏に冬の白い羽のライチョウ、冬に夏羽のライチョウを展示できればと考えています。

◎孵化の動画
 Windows Media形式QuickTime形式

2009年の換羽のようす

◎東京ズーネットBBの動画から

 「スバールバルライチョウ孵化」2008年8月撮影
ライチョウ公開!」2008年12月撮影

写真上:夏羽(メス)
写真下:冬羽(メス)

〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕〕

(2011年02月04日)



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