ムササビのなかまはユーラシア大陸南部に分布していますが、日本には固有種のムササビ(Petaurista leucogenys)が生息しています。多摩動物公園では2頭のムササビを飼育していますが、この2頭が動いている姿を見たことのある方は少ないのではないでしょうか。
巣穴から顔を出すムササビ
「毛玉が寝ている」という来園者の声をよく耳にします。ムササビは夜行性のため日中はほとんど寝てすごし、行動し始めるのは日が落ちてからだいたい30分後です。そのため、飼育を担当する私も動いている姿をあまり見たことがありません。
しかし、夜に行動していることは生活痕を見て把握しています。そこで今回は、ムササビのさまざまな生活痕について紹介します。まずはえさです。
秋のムササビのえさ
ムササビは四季のある日本で生活しているため、季節にあわせたえさを与えるようにしています。一年中与えているえさは、リンゴ、サツマイモ、ヒマワリの種、オニグルミ、シラカシです。この写真は秋に撮影したもので、園内で採れたドングリ、クリ、アケビ、カキも加えてあります。日が昇る前にこれらを食べ終えるので、朝になるとヒマワリの種の殻やドングリの殻などが皿に残っています。
また、園内に生えているヤマモモ、ツバキ、スギ、サクラ、モミジの木の枝をときどき与えています。ムササビは葉を食べるときに折りたたんで食べるため、画像のような左右対称な葉の食痕が残ります。
葉の食痕。葉を真ん中で折りたたんで食べるため、左右対称なかたちになります
さらに、樹皮を削って食べることもあれば、巣穴に持ち込むこともあるため、その残りが地面に散らばっていることもあります。
つづいて、こちらのヒマワリの種より小さい丸い粒ですが、何だかわかりますか?
これはムササビのうんちです。においはなく、手で簡単につぶせるくらいの固さです。ムササビは基本的に木の上で排泄するため、朝になると地面にこのようなうんちが散乱しています。
日中に行動しているところを見ることができないため、毎日しっかりとえさを食べているか、うんちをしているかの痕跡を見て、健康状態を確かめています。そのため、このような痕跡が大事な健康チェックにつながるのです。
野生のムササビも同じような痕跡を残すので、森林や社寺林などに出かけた際には探してみるのも面白いと思います。当園でも、巣穴をよく見ていると顔を見せてくれることもあります。生活痕といっしょに観察してみてください。
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 鈴木〕
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