多摩動物公園には2頭のムササビがいます。オスは12歳の「ハンゾウ」、メスは5歳の「アズミ」です。ちょっと年の差カップルです。朝、ムササビ舎に行くと2頭は同じ巣箱で寝ていますが、日中は木をくりぬいた巣穴の中で見ていただいています。
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朝、2頭で巣箱に入っているところ | 仲良く食事中…に見えてハンゾウ(左)が食べていた煮イモを横取りしたアズミ(右) |
野生のムササビは、木の葉や樹皮、花やつぼみなどを食べています。そこで、今年(2016年)4月から多摩動物公園内で調達できる木を利用して、木の葉や樹皮中心のえさに変更しました。すべて木の葉や花などにしてしまうのではなく、リンゴや煮たサツマイモ、キーウィを4分の1ほどに減らし、残りは園内で調達した木の枝や葉、花などにしたのです。
ムササビは日没後に動き出すので、えさを食べているところを直接見ることはあまりないのですが、前日に与えた枝葉の残り具合と糞の状態を朝確認し、食べているかどうか判断しました。
春から夏はカエデやコナラ、ケヤキ、シラカシなど、夏以降はアラカシやクヌギなども与えました。最初は、枝から葉っぱがちぎられているだけでしたが、そのうちに樹皮まで食べるようになりました。
ある時、クヌギの葉は中央の葉脈だけが残っていることに気づきました。カエデやコナラの葉は何も残りません。樹種によって、葉の食べる部分が違うようでした。
落ちている楊枝のようなものが食べ残した葉脈
11月、マテバシイの葉っぱを与えてみたところ、葉を二つに折って、中心部分だけを食べていました。一方、夏まではよく食べていたカエデは、暑さが増し始めたころから食べなくなりました。季節によって葉の成分が変わっているのかもしれません。
マテバシイの葉を食べた跡(左4枚)
4月の最初のころ食べていたツバキはすぐ食べなくなり、しばらく与えていなかったのですが、ツバキはつぼみを食べると聞いていたので、秋になって花が咲き始めたころ、つぼみだけ置いておくと食べました。堅いつぼみももう咲きそうなつぼみも、もちろん開いた花も食べます。ただ、堅い実は食べませんでした。
また、11月のある日、ハロウィンで使ったカボチャをいただきました。多摩のイノシシたちには人気なのですが、(下記ニュース)、他の動物たちにはあまり評判がよくありません。そこで小さいサイズのカボチャを縦半分に切ってムササビに与えてみました。すると、実ではなく、種の部分だけを食べていました。カボチャの種を食べる動物は他にもいるのですが、ムササビたちがあまりにきれいに種の部分だけ食べたのでびっくりしました。種を食べた後で皮も食べていましたが、私たち人間が食べる実の部分はあまり食べないようです。
ハロウィン用カボチャは種の部分だけを食べました
季節はこれから本格的な冬を迎えます。ムササビに用意できる木の枝葉も限られてきますが、ようすを見ながら、いろいろ与えてみたいと思っています。多摩動物公園内には、ムササビが利用できる木々がたくさんありますが、困ったことに、どの木も高く成長していて、えさとして利用できる木は限られます。
高くなった木を眺めながら、「ムササビを放し飼いにできたらいいのにな」と思うこのごろです。
・ニュース「
イノシシ『キントン』と『クロマメ』の好きなもの」(2016年10月14日)
〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕
(2016年12月02日)