日本のカブトムシといえば、一般的には暑い夏のイメージですが、多摩動物公園の昆虫生態園では、1年を通してカブトムシの成虫と幼虫を展示しています。切れ目なく展示を維持する方法については、カブトムシの成長過程をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。
カブトムシは、「卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫」と成長します。幼虫時代は、「1令→2令→3令」の順に、脱皮を繰り返して大きくなります。
野生のカブトムシは、3令幼虫時に腐葉土の中で越冬し、春の温暖な時期になると目覚め、その後まもなく蛹になり、夏に羽化して成虫になります。
撮影のために、マットから取り出した3令幼虫。白く筋状に見えるのは、体内に空気を運ぶ気管
昆虫園で展示している成虫は、基本的にオスで5匹程度です。それ以外の成虫はバックヤードで交尾をさせ、次世代の卵を産ませています。夏以外の季節に産卵された卵も、温度調節をして野生のカブトムシと同じ生育期間になるよう管理しています。
幼虫が3令になるまで育ったら、春夏秋冬どの季節も幼虫が入っている飼育ケースを5~7か月ほど冷蔵し、疑似的に冬の低温(7~8℃)を経験させています。低温を経験させなくても成虫になれるのですが、羽化時期がバラバラになるという管理上のデメリットがあるため、冷蔵して羽化時期をなるべくそろえるようにしています。
ふだんはあまり見ることのない蛹(さなぎ)のようす
昆虫園の冷蔵庫内には、カブトムシ幼虫の越冬用ケースが所狭しと並んでいます。これらのケースを、羽化させたい約2か月前に室内(26℃前後)に移動させます。その後、蛹期間を経て無事に羽化したカブトムシを確認できれば、一安心です。
冷蔵庫で低温管理中のカブトムシ幼虫飼育ケース。1ケースに20匹前後の幼虫が入っている
このように管理しているため、昆虫園には1年中、卵・幼虫・蛹・成虫がいるわけなのです。約1年かけて成虫になったカブトムシたちを、冬の昆虫園でぜひご覧ください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 吉川〕
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