多摩動物公園内の外国産トキ舎で春先から夏にかけての繁殖のようすを、部屋ごと3回に分けてご紹介します。第3回はシロトキとクロトキです(
第1回「ショウジョウトキとムギワラトキとクロツラヘラサギ」はこちら、
第2回「アンデスブロンズトキとホオアカトキとインカアジサシ」はこちら)。
外国産トキ舎の配置図
シロトキ
名前のとおり成鳥は真っ白なシロトキですが、ひなはこれまで紹介したショウジョウトキやホオアカトキと同じで黒っぽい色をしています。シロトキのひなはくちばしがピンク色で、先端だけ黒いです。成長するうちに黒と肌色の縞模様に変化します。
| |
人工孵化した6日齢のひな (2023年6月23日撮影) | 親と成長したひな (2023年7月6日撮影) |
ここ数年、シロトキが繁殖せず、産卵を促すとともに落ち着いて抱卵できるように、園内のウォークインバードケージから繁殖力の強いクロトキを2ペア移動していっしょに飼育しました。落ち着いたペアのクロトキの繁殖行動からシロトキは安心して営巣や抱卵できたためか、今期はすでに6羽のひなが巣立ちました。そのうち人工孵化させた卵は1つで、ほかはすべて自然孵化しています。人工孵化したひなも、孵化後6日目まで人工育雛してから擬卵を抱いている巣に戻したところ、仮親となるシロトキがそのひなを受け入れて育雛をしてくれました。
クロトキ
クロトキは、「黒」は頭からくちばしにかけてと脚で、体全体は白く、英名ではBlack-headed Ibis(黒い頭のトキ)、さらに同じクロトキ属のオーストラリアクロトキはAustralian White Ibis(オーストラリアの白いトキ)とも呼ばれています。また生まれたてのクロトキのひなも、成鳥とほぼ同じ羽毛の色ですがくちばしはピンク色をしていて、巣立つころには成鳥と同じ黒になります。
自然孵化数日後のひなと擬卵(2023年6月23日撮影)
成長し巣立ちが近くなると、親が巣立ちを促すかのように巣材をもりもりと積み上げ、園路側からひなが常に見えるほど高く、巣とは思えないものになってしまいました。飼育下のトキ類は、巣材にできそうなものがあれば巣に運んで、巣に組み込むことがありますが、今回このような形になった巣はこのクロトキの巣1か所だけでした。それでも、設置された止まり木がしっかり固定されていたこともあり、ひなたちが上り下りしても巣が崩れることはなく、無事巣立つことができました。
| |
7月3日の巣 | 山のようになった7月10日の同じ巣 |
現在では成鳥と見分けにくいほど成長しました。成鳥は頭部から上頸にかけては羽が抜けて禿げ上がり、黒い皮膚見えるのですが、ひなはよく見ると頭に黒い羽毛があります。
〔野生生物保全センター保全係 村山〕
◎関連ニュース
・
クロトキの不思議な卵(2010年05月07日)
・
トキ舎が繁殖ラッシュ、にぎやかです(2019年07月12日)
(2023年10月17日)