東南アジアに生息する葉っぱそっくりなオオコノハムシ。少し枯れたようなところがあるのもリアルで、飼育担当者でもなかなか見つけ出せないことがあります。
オオコノハムシの成虫(メス)
多くの昆虫の成虫には、
前翅と
後翅が1対ずつ計4枚の
翅があります。しかし、オオコノハムシのメスの前翅の下を覗いてみると、後翅の痕跡のようなものしかなく、飛ぶことができません。
前翅の下にある後翅の痕跡のようなもの
一方、オオコノハムシのオスは飛ぶことができ、小さな前翅と大きな後翅を持っています。実はオオコノハムシのメスはオスと交尾しなくても繁殖でき、オスが生まれることはまれです。写真のオスは、当園で2019年に羽化した個体の標本です。
オオコノハムシの成虫(オス)。小さな前翅と大きな後翅があります
それでは、メスの前翅は何のためにあるのでしょう? 左右の前翅が合わさると1枚の葉にそっくりなため、ひとつは葉への擬態に一役買っているように思えます。では、ほかに役割はないのでしょうか。試しにオオコノハムシを空中に投げてみると、前翅を大きく広げることがわかりました。投げ方のせいかもしれませんが、滑空しているようにも見えます。
翅を広げるオオコノハムシ(スローモーション)
葉から落ちたとき、地面まで落ちてしまうと、再び高い木の上に登るのは大変でしょうし、そのあいだに敵に襲われる可能性もあります。そのため、滑空するようにしてなるべく近くの葉につかまるのかもしれません。あるいは滑空とはいかないまでも、空気抵抗を大きくして、落ちたときの衝撃を和らげているのかもしれません。
葉に隠れるオオコノハムシ。その翅には、隠された秘密がありそうです。
〔多摩動物公園元昆虫園飼育展示係 田中〕
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