多摩動物公園の昆虫園本館2階では、昨年(2016年)8月からオオコノハムシの展示を始めました(
お知らせ)。年が変わり、展示していた成虫たちが寿命によって減っていくと、入れ替わるように2017年2月から幼虫が次々と孵化してきました。
そのまま孵化した個体の展示を続けていたのですが、幼虫たちの成長はとてものんびりしていて、同じ時期に孵化した隣の展示昆虫オオコノハギスたちが夏にいっせいに羽化した後も、オオコノハムシはひたすらマイペースで幼虫時代を過ごしていました。
脱皮も9回を数え、今年中の羽化はないのでは……とも考えていたのですが、11月19日朝、ついに成虫第1号が羽化しました。もっとも早い孵化が2月4日だったので、おそらく9か月近くは幼虫期間があったことになります。
写真1:羽化した個体。体の模様は個体によってさまざまです
無防備で本来危険な幼虫期間をこれだけゆっくり過ごせるのは、擬態能力の高さや、生息地であるマレーシアの安定した気候と環境がなせるものかもしれません(写真1)。
展示中のオオコノハムシはすべてメス、羽化した成虫もメスです。私が確認したかぎり、いままで孵化した幼虫は2、3個体を除いてメスだったので、雌雄の比率には非常に偏りがあるようです。
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写真2:見事なつくりの翅(前翅)。 一枚の葉のように見えます | 写真3:メス終令幼虫の「翅芽」(伸びる前の翅)。 1対しかありません |
成虫と幼虫の外見はとてもよく似ていますが、よく見ると成虫は背中に翅が生えています。しかし、昆虫の翅は一般に前翅と後翅の2対生えているのですが、オオコノハムシのメス成虫には前翅1対しかありません。しかも、背中を覆う役割しか果たしておらず、飛ぶような仕組みにもなっていないのです。そのかわり、翅には葉脈のような精巧な模様がほどこされていて、左右の翅をあわせると、ちょうど一枚の葉になるようにできています(写真2、3)。
展示個体はまだ全体の1割ほどしか羽化していないので、今後2月ごろまで羽化が続く見込です。基本的に夜活発に動く昆虫なので、脱皮や羽化も夜間におこなわれることが多いのですが、ときどき開園時間帯におこなっているのんびりした個体もいます。羽化はたいていケースの下の方で見られます。朝早くご覧になる方はぜひチェックしてみてください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕
(2017年12月15日)