チンパンジーの「ペコ」(メス)は、現在推定60歳で日本最高齢のチンパンジーです。動物園で飼育されているチンパンジーの平均寿命は40年と言われています。そのため、60年以上生きているペコはたいへん長寿であると言えます。
高齢ではありますが、若いチンパンジーには負けない勢いを持つペコの健康の秘訣について、ご紹介したいと思います。
衰え知らずの元気なチンパンジー「ペコ」
(撮影日:2021年12月7日)
現在、多摩動物公園ではチンパンジーのえさのメニューを、果物を多く含むものから野菜を豊富に含むものへと改善中です(くわしくは末尾の「関連記事」をご覧ください)。
ペコは果物を多く摂取する生活が長かったため、初めて見る野菜に対して抵抗を感じるようで、残すことが多いです。はたから見れば、食べ残しが多く栄養が足りていないのではないかと思ってしまいますが、ペコ自身健康そのもので体調を崩すこともなく、便通も整っています。
健康を保っているひとつの要因として、枝葉をよく食べることが考えられます。枝葉や種子は野生下での主な食べもので、栄養バランスに優れています。さまざまな種類の枝葉をたくさん食べることで、おのずと身体の調子が整っていると考えられます。また、好き嫌いが多いとは言え果物を食べる量が減ったため、余分な糖質の摂取が抑えられていることも健康の秘訣につながっていると考えられます。
健康な身体をしているためか、精神面でも若々しさを感じる部分があります。若いオスのチンパンジーが「ディスプレイ」と呼ばれる力をアピールする行動をとった際、先頭に立って激しく追い立てます。時には取っ組み合いをするほどで、ペコの本気を目の当たりにすると彼らも泣き顔になりながら逃げていきます。年を感じさせないペコの勢いには私たち担当者も圧倒されます。
60歳を迎えても、衰えを知らないペコ。これからも、そしていつまでも健やかに過ごしてもらいたいものです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 佐藤〕
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