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バナナ給餌をやめました──チンパンジーたちの食事情・続編
 └─2021/01/22
 多摩動物公園でのチンパンジーの栄養管理について2020年2月7日の記事でお伝えしましたが、今回はその続編です。栄養管理の具体的な取り組みとその大切さについてお話しします。

 前回お伝えしたように、チンパンジーたちへの果物の給餌を控え、おもに野菜を与える取り組みは今も続けています。具体的には、2020年4月からバナナの給餌をやめました。以前は毎日与えていたバナナですが、今ではすべてのチンパンジーにバナナを与えなくなりました。また、ほぼ毎日仕入れていた季節の果物も週3日程度の納入に留め、一日に与える果物の量を少なくするようにしました。果物を減らす一方で、野菜を増やしています。ただし、野菜の量を増やすだけでなく、種類をなるべく多くするようにもしています。


チンパンジー1頭あたりの1日分のえさ(2021年1月現在)

 これらの取り組みはチンパンジーが本来野生で摂取している栄養素に近づけるために大切です。また、バラエティーに富んだ野菜を与えることでバランスの取れた栄養を摂取できるほか、飽きやすいチンパンジーたちが飽きずにいろいろな栄養を野菜から摂取できるような仕組みづくりも可能になりました。

 給餌内容の見直しだけでなく、給餌回数を増やしたり、フィーダー(給餌器)などを設置して本来の採食行動を引き出したりして、チンパンジーたちの採食時間がなるべく長くなるような取り組みも栄養管理の一環としておこなっています。というのも、飼育されているチンパンジーは野生のチンパンジーにくらべて採食に割く時間が少なく、それが原因で野生では見られない異常な行動が観察されるとも言われているからです。少しでも行動の多様性を増やし、チンパンジーたちが心身ともに健やかにくらせるよう支えていくことも栄養管理の重要な側面なのです。

2019年生まれの「プラム」と「イブキ」も
しっかり野菜を食べています
えさを野菜にすることで時間を
かけて食べるようになりました

 個体によっては、初めての食べ物やしばらく与えられていなかった食べ物を少し警戒するなど、新たな課題も出てきましたが、今後も栄養改善の取り組みは継続していきます。さらに、現在実践している栄養管理がチンパンジーのくらしに与える影響について科学的な検証にも着手したいと考えています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 伊藤〕

(2021年01月22日)



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