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ゲンゴロウの卵のサルベージと人工孵化
 └─2020/07/31

 ゲンゴロウは初夏から夏に繁殖の季節を迎え、野生では水草の茎の中などに卵を産みつけます(井の頭自然文化園の以前の記事)。

 多摩動物公園の昆虫園でも毎年ゲンゴロウに水草のオモダ力へ産卵をさせていますが(2011年記事2013年記事)、ときどき水槽の中に卵を産み落としてしまう個体がいます。数年前の担当時、落ちた卵は傷んで水を汚す前に処分していたのですが、今年の4月、数年ぶりに水生昆虫の担当になった際、過去の担当者が拾って孵化をさせたという記録を目にし、今回は自分なりに工夫しながら人工孵化に挑戦してみました。

 産卵する水草の茎の内部はスポンジ状になっていて、卵が完全には水没しないようになっています。そこで、乾燥しない程度に湿っていればよいだろうと考え、水分量を調整したメラミンスポンジの上に乗せるだけというシンプルな方法を試みました。


拾って乗せるだけの簡単孵化法

 その結果、最初のいくつかはそのままダメになってしまったものの、無事発生が進んで孵化する個体が現れました。水中から引き上げるタイミングも大切なようで、産卵直後よりも1~2日経過してから回収した方が成功率も高い印象があったため、確認した翌日に回収するようにしたところ、失敗はほとんどなくなりました。

回収数日後、頭部の出っぱり
(写真下部)が目立ってくる
孵化間近の卵

 水草を使うより管理の負担も少なく、この方法は飼育方法としてむしろよいのでは?と思い、その後もあえて水草を投入せずに続けてみたところ、現在飼育中の幼虫24匹中14匹はこの方法で孵化することになりました。水草のように何度も新しい株を用意しなくてよいのは非常に助かります。

 もっと繊細なものと思っていた卵の意外な頑丈さに驚いた夏でした。来年以降もこの方法が通用するのか、興味はつきません。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕

(2020年07月31日)



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