ゲンゴロウ見たことありますか? ゲンゴロウをはじめとする水生昆虫が生息できる環境が減ってしまい、自然の中で見たことがある方は案外少ないのではないかと思います。
現在井の頭自然文化園で展示しているゲンゴロウは、すべて水生物館で生まれ育ったものです。今年もバックヤードで何匹ものゲンゴロウが成虫に育ちました。その間いくつかの成長段階を撮影することができたので、「新たな視点」シリーズでお伝えします。
流線型のボディ、緑がかった渋い体色、ふちのイエローライン。カッコいい!
初回は卵から幼虫が生まれる「孵化」(ふか)のようすをご紹介します。ゲンゴロウは水辺に生える植物の内部、スポンジ状になった部分に卵を産みつけます。水生物館ではヘラオモダカという水草を使っています。
交尾ずみのゲンゴロウがいる水槽にヘラオモダカを入れておくと、メスは葉の軸をかじって内部のスポンジ状の部分に直径1.5ミリ、長さ13ミリほどの細長い卵を産みつけます。
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水生物館で使用する水草ヘラオモダカ | スポンジ状の部分を削いでいくと孵化直前の卵が 見つかった。あごと尾の先部分を折り曲げて収ま っている |
産みつけられた卵は2週間ほどで孵化し、親が産卵のために開けた穴から体長25ミリくらいの細長い幼虫が現れます。多く産みつけられたヘラオモダカからは一晩で何匹もの幼虫が孵化しますが、そのままにしておくと幼虫たちは共食いを始めてしまいます。見つけた幼虫は1匹ずつ小さな容器に移して育てます。
【動画】タイムラプスで撮影。実際は17時間ほどで映っている範囲で4匹が孵化。2匹目は孵化の途中で
共食いされてしまう。映像の後半は露出させた卵のアップ。実際の孵化にかかった時間は4分20秒
体長25ミリほどの1令幼虫。大きなあごと独特な眼が目立つ
ゲンゴロウの幼虫は細長い体に大きなあごが目立ちます。次回はこのあごでえさを捕らえるようすを紹介します。
・前回の記事
「
続々・新たな視点で見てみると[2]──不思議カプセルからエイリアン出現:タイコウチの孵化(2017年7月9日)
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕
(2017年09月01日)