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ゲンゴロウ幼虫の展示
 └─2011/08/19

 関東地方のゲンゴロウは、東京都と神奈川県で絶滅、千葉県でも近年の生存情報がなく、絶滅した可能性が高いといわれています。環境省のレッドリストでも準絶滅危惧種に指定され、全国的に生息数が減っています。

 一方、大型で見栄えがするため、水生昆虫の展示では欠かせない種類の一つです。野生個体が減っているので、多摩動物公園昆虫園では展示を維持するために繁殖させています。

 ゲンゴロウはオモダカなど水草の組織の中に産卵するので、採卵のため水槽の中にヘラオモダカを入れておきました。そのままでは卵を食べてしまうこともあるので、数日おきに植物を取り出します。

 孵化した幼虫は、水中でほかの生物を捕食して成長しますが、共食いをすることが多いので、1尾ずつ個別飼育をします。 2回の脱皮を経て3令幼虫になり、準備ができると上陸し、土の中に潜って蛹になります。昆虫園では幼虫を水中から陸上へ担当者が移動しますが、そのタイミングが重要です。遅すぎると死亡してしまいますし、逆に早すぎても土の中に潜っていきません。餌を食べなくなるのが上陸させるためのサインですが、こればかりは各個体ごとに観察して、水中から出す判断をする必要があります。土の中に潜って約1か月後、ようやくゲンゴロウの成虫が地表に出てきます。

 ゲンゴロウ幼虫の育成作業は展示の裏側でおこなっているので、お見せすることはできないのですが、小さなケースで幼虫の展示を開始しました。場所は本館の水生昆虫を展示している水槽です。

 幼虫は「いも虫」のような形をしており、大きなあごや、細長い呼吸管など、親とは異なることがわかります。なお幼虫の展示は、個体が成長し、上陸する準備ができ次第終了します。

写真上:ゲンゴロウの幼虫
写真中:土の中に潜っていく3令幼虫
写真下:地表に出てきた成虫

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 橋本浩史〕

(2011年08月19日)



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