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コウノトリの繁殖への取り組み
 └─2015/10/16

 「ニホンコウノトリ、28年連続で誕生!」──今年(2015年)の春、東京ズーネットでお知らせしたニュースのタイトルです。

 「28年連続で誕生」というと、コウノトリの繁殖はずっと順調に続いているように思われるかもしれませんが、この数字の裏には、折々に課題と向き合い、試行錯誤しながら繁殖に取り組んできた経緯があります。今年は、兵庫県立コウノトリの郷公園と多摩動物公園のあいだで有精卵の移動をおこなうとともに、なかなか繁殖がうまくいかなかったペアが子育てに成功するという出来事がありました。今回はそのペアについてご紹介しましょう。

 なかなか繁殖しなかったペア(以下、小ケージペア)は、現在サイ舎の上にあるコウノトリ舎小ケージにいますが、2014年までは別の場所でくらしていました。実はこのペアは、以前はそれぞれ違う相手とペアを組んでいたので、いわば“再婚”同士です。以前のペアのときに子どもが多く生まれたので、異なる血統を残すために再婚させたのです。

 しかし、再婚してから今まで、産卵は見られましたが、卵やひなが行方不明になってしまうことが多く、ひなが育つことはありませんでした。とくにメスが神経質で、人が近づくだけでせっかく集めた巣材を地面に落としてしまうなど、なかなか落ち着いて繁殖に取り組むようすが見られませんでした。

 そこで、今年は別のケージに引越しをさせ、心機一転、新しい環境で繁殖させることにしました。また、小ケージペアの卵は、抱卵中に穴が開いてしまっていたことがあったので、そのまま抱かせておくのは心配で、同じサイ舎上のコウノトリ舎の別のペアに卵を託しました。そのかわり、小ケージペアには子育てを経験させるべく、別のペアの産んだ卵を孵化直前の時点で託しました。


小ケージペアのひな(2015年5月4日)


飼育係に対して威嚇してくるメス。足もとにひながいる(2015年5月20日)

 この取り組みがうまくいき、春のニュースでお伝えしたとおり、卵を交換した両ペアで5月2日と20日、ひなが誕生しました。小ケージペアのメスはやはり神経質で、なかなか給餌する姿を見せてくれなかったり、孵化後15日齢でひなに生えてきた黒い羽を汚れと思ったのか過剰に羽づくろいして出血させてしまったり、ひやひやする場面もありましたが、ひなは無事巣立つことができました。

 コウノトリのひなは危険がせまると“死んだふり”をしますが、神経質な親に育てられたせいか、このひなは巣にいるあいだ、飼育担当者が観察しているとほとんどいつも“死んだふり”をしていました。厳しいしつけのもとに育てられた子です。


ストックエリア。この中に今年生まれのひなが入りました

 今年孵化したひなたちは、すべてモウコノウマ舎上のストックエリアに移しました。このひなたちが新しい集団の中に入って、どんな風に育っていくのか楽しみです。

・関連記事「ニホンコウノトリの卵を兵庫県立コウノトリの郷公園と交換します」(2015年4月28日)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕

(2015年10月16日)


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