葛西臨海水族園では、世界中の海や水辺に生息している生き物たちを600種以上展示しています。今回は展示している魚たちが展示水槽にデビューするまでを「カリブ海」水槽で展示をしているグレイエンゼルフィッシュとブルーヘッドを例に紹介します。
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グレイエンゼルフィッシュ | ブルーヘッド |
展示する生物は、水族園スタッフが自らさまざまなフィールドに出かけて採集したり、専門の業者から購入したり、国内外の水族館と生物交換をしたりして集めています。今回紹介する2種は海外の業者から購入しました。
まず初めに、水族園にやってきた魚はバックヤードの予備水槽に収容します。このとき、採集や輸送時に生じた傷が見られれば隔離水槽に入れ、治療します。
バックヤードには大小さまざまな水槽があり、異なる水温や塩分のほか、同居させてもケンカしないよう、魚の大きさや魚どうしの相性を見極めて振り分けていきます。たとえばグレイエンゼルフィッシュやブルーヘッドのようななわばりをもつ魚は、小さい水槽に少数入れるとケンカをしてしまいます。そこで、小さい水槽なら別々に入れたり、大きい水槽にまとめて入れるなら隠れ家を用意します。この見極めは魚を飼育するうえでとても大事なことです。
水槽に魚を入れて落ち着いたら、餌付けをしていきます。自然の海ではさまざまな種類のものをえさとして食べていますが、それらすべてをそろえるのは難しいため、オキアミやサクラエビといった比較的安定して手に入るものをえさとして与えています。また栄養が偏らないよう何種類ものえさを用意し、魚たちの口の大きさにあわせてさまざまな大きさに切って用意しています。
ミンチにしたえさ各種。魚の口の大きさ合わせて用意する
そして、無事に餌付いたら、展示水槽に移動する前に寄生虫を持ち込まないように、隔離水槽に移し、薬を使って魚の体についている寄生虫を駆除します。もしこの作業をせず展示水槽に移動してしまうと、展示水槽にいる魚に寄生虫がうつってしまうため、重要な作業になります。
このようないくつもの段階を経て、グレイエンゼルフィッシュとブルーヘッドは無事「カリブ海」水槽にデビューしました。健康な魚たちを見にぜひ水族園へお越しください。
ほかにも展示を維持するために、繁殖にも取り組んでいます。ぜひ、
こちらの記事もご覧ください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕
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