現在、葛西臨海水族園の「世界の海」エリア「北太平洋」の水槽では、カガミダイを展示しています。カガミダイは、「深海4」の水槽で展示しているマトウダイのなかまで、水深約40~800mに生息しています。
その名のとおり鏡のように光を反射するので、薄暗い水槽でもときおりキラキラと目立ちます。第一背びれが長いのが特徴で、メタリックに光る体表に多くの黒い斑点があるユニークな見た目をしています。この斑点模様は若い個体特有で、成長するとなくなります。
斑点模様のある若いカガミダイ
カガミダイのおもしろさは、その外見だけではありません。えさの食べ方も特徴的です。ふだんはゆったりと泳いでいますが、えさに気づくと、第二背びれと尻びれを細かく波立たせてスーッと近づき、目にもとまらぬ速さで口を伸ばし、えさを丸飲みにしてしまいます。食べ方については、
こちらの記事でも紹介しています。
口を伸ばしたカガミダイ
カガミダイは餌付かせるのが難しい魚です。自然界ではエビや小魚を食べますが、飼育下に置かれると、初めは動いている生きたえさにしか反応しないため、水族園で通常あたえている生きていないえさに慣れさせるには工夫が必要です。
現在展示している個体を水族園に搬入したときに、生きたイサザアミや生きた小さなエビをあたえてみたところ、すぐに反応して食べました。しかし、毎日生きているえさを用意するのは大変です。そこで、私たちがふだんほかの魚にあたえているえさにも慣れさせるために、まずは冷凍のツノナシオキアミ(通称アミエビ)を解凍したものをあたえてみました。水槽に落とすだけでは動かないため、えさと認識しないのか反応しませんでしたが、水流に乗せて、えさが動くように落としてみると、カガミダイはひらひらと流れるアミエビをスーッと追いかけるようになりました。
これを繰り返しているうちにえさと認識したのか、そのまま近づいて狙いを定め、見事にアミエビを食べました。さらに、アミエビより大きいサクラエビを水流には乗せず糸に付けて少しだけ動かすなどの工夫をした結果、今では水槽に落とすだけですぐに食べるようになりました。
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ツノナシオキアミ | サクラエビ |
無事にえさに慣れて食べるようになり、安定した飼育ができるようになりました。今後も長く展示していけるよう努力していきます。ユニークな見た目やえさの食べ方など、カガミダイのインパクト抜群な姿をぜひ見に来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 松本あかり〕
(2023年06月16日)