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メスからオスへ、ホンソメワケベラの不思議
 └─2010/02/02

 葛西臨海水族園の「南シナ海」水槽に2匹のホンソメワケベラがいます。ホンソメワケベラは別名「掃除魚」(クリーナー)とも呼ばれ、ほかの魚の体表などについた寄生虫を食べることでよく知られています。国語の教科書にも登場するので、ごぞんじの方も多いでしょう。

 これら2匹は、どちらがオスで、どちらがメスかわかりますか?  人間なら外見で比較的簡単に(?)男女を見わけることができますが、魚のオスとメスはどうでしょう。外見だけでは雌雄の区別ができない魚、一生のあいだにオスとメスの両方を経験する魚、1匹がオスとメスの両方の役割をもつ魚など、魚の性はとても複雑です。

 ベラのなかまの多くは「雌性先熟」(しせいせんじゅく)の魚として知られています。雌性先熟の魚は、まずメスとして成熟し、その後でオスに性転換します。このなかまは、1匹のオスが縄張りをもち、そこに何匹かのメスが集まり、一夫多妻のハレム社会を作ります。

 では、この水槽のホンソメワケベラのオスとメスの見わけ方をお教えしましょう。体の大きさはほぼ同じといってよいほどですが、よく観察してください。大きめの個体がオス、少し小さくてお腹がふくらんでいるのがメスです。

 日中はほかの魚のクリーニングに忙しい2匹ですが、夕方近くなるとお互いを意識するようになり、産卵行動にいたります。葛西臨海水族園では夕方近く、ベラのなかまの産卵行動を観察できることがあります。ペアになったオスとメスは、いっしょになって水面近くに泳ぎ上がり、メスが産んだ卵にオスが精子をかけます。水の流れが速い水面近くで産卵すると、卵を広範囲にばらまくことができますし、薄暗くなってから産卵するので、卵がほかの魚に捕食されにくいのです。

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〔葛西臨海水族園飼育展示係 牧茂〕

(2010年02月03日)



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