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「紅海」のフォーラインラス
 └─葛西  2009/09/04

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「紅海」水槽では、2009年7月30日からフォーラインラスを展示しています。細長く黒い体に青い縦じまが入っており、全長は最大で10センチ以上にもなります(展示しているフォーラインラスは、現在5センチ程度です)。インド洋からアラビア半島とアフリカ大陸にはさまれた紅海に分布する、「掃除魚」の一種です。

 「掃除魚」とは、他の魚の体表にいる寄生虫などをつついて食べる魚のことです。葛西臨海水族園では、代表的な掃除魚として知られているホンソメワケベラを「南シナ海」水槽などで展示しています。「南シナ海」水槽にいる大きな魚はホンソメワケベラを掃除魚として認識しており、ときどき自分から近づいて行って、体を掃除してもらっています。体長1メートルを超える大きな魚が、体表だけでなく、えらを開いて奥まで掃除をしてもらう姿は、本当に気持ちよさそうです。

 フォーラインラスはさかんに泳ぎまわり水槽の岩をつついていることが多いのですが、ときおり、他の魚に近づいて体表をつつく行動が観察されます。相手によっては、つつかれた瞬間、ぶるっと体を震わして逃げ出してしまうものもいますが、自分から掃除をしてもらおうとする魚もいます。

 自分から掃除魚に近寄って行き、リラックスして掃除をしてもらっている魚を見ると、「掃除」されるのはとても気持ちがいいのだろうなと想像されます。しかし、中には嫌がる魚もいるので、すべての魚にとって「掃除」が心地よいわけではなさそうです。掃除魚は他の魚をつつくことで寄生虫などといっしょに粘膜をかじりとっているため、痛みを強く感じる魚もいるのだと思います。

 掃除魚が「掃除」してまわる姿は、海でもなかなかお目にかかれませんが、さまざまな反応を含めて、その行動を見ることができるのは、水槽展示ならではのことだと思います。

 「世界の海」エリアでは掃除魚のなかまとして、「南シナ海」と「グレートバリアリーフ」でホンソメワケベラを、「ハワイ沿岸」でハワイアンクリーナーラスを展示しています。どの水槽でも、他の魚を掃除するところが見られます。掃除する側の行動はもちろん、される側の反応もさまざまで、とても面白いと思います。水槽の前でぜひ観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2009年09月04日)



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