みなさんにもお気に入りの布団や枕がありませんか。旅行先になると枕が変わって寝られない、という方もいるのではないでしょうか。
アフリカゾウ舎には室内や運動場に砂山があります。これはゾウが遊ぶ以外に夜寝るために使っているベッドでもあります。ゾウは休むときに立ったまま長い時間まどろんだり、横になったりします。

砂のベッド
多摩動物公園のアフリカゾウのオス「砥夢」(トム)は横になって眠ります。その際に、体が少し斜めになるような砂のベッドがあると起き上がりやすくなり、横になったときの自重による体への負担が緩和されます。しかし、どうやら砥夢にはベッドの好みがあるようで、形が変わると睡眠時間が短くなるなどの変化が見られます。

体の右側を下にして眠る砥夢
砥夢の部屋にある砂山ですが、毎日掃除のあと、重機を使って砂を盛りなおしています。ゾウの砂のベッドは大きく、しかも寝たあとは大変固くなるので、重機で砂をかき混ぜてふかふかにすることで、少しでも寝やすい環境を整えます。

ベッドメイク中
砂を混ぜながらベッドを作っていくわけですが、だいたい高さ2m、奥行2m、幅6mほどにしていくと砥夢は寝やすいようです(あくまで筆者の主観です)。ゾウによっては体の右側を下にしてでしか寝ない、あるいは横にならない場合もありますが、砥夢は右向き、左向きどちらでも横になります。これが意外と大変で、砂山の長端の両側を同じ高さ、あるいは少し高めに作った方が砥夢は寝やすいようなのです。ベッドの形が気に入らなかった日の夜は、たいがい座ってやめたおしりの跡だけが砂山に残っています。

おしりの跡
ベッドの形が整ったら砂山の周りを囲うように、幅1.5mほどの浅い砂の層を作ります。これはゾウの爪を保護するためです。ゾウは横になって寝ているときも四肢をよく動かします。このときコンクリートの床にふれている爪がこすれて割れてしまうことがあります。また、起き上がるときも同じで足を振って起き上がるときに硬い地面に足をつけると、斜めに体重がかかったときに爪が割れる原因になります。
監視カメラの映像を見ると、砥夢は一晩に平均で約3時間横になってすごします。気温や湿度などにもよりますが、1時間しか寝ていないと「ベッドの出来がいまいちだったのかな……」となります。その翌日は寝不足で5時間寝たりもしますが、毎日安定した睡眠ができるように砥夢が寝やすいベッドメイクをしたいものです。
さて、今日はどれくらい寝てるかな。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 野本〕
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