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先日、葛西臨海水族園のすぐ目の前に広がる「西なぎさ」で、小型の地びき網をつかって調査をおこなったときのことです。この時期は、春や夏にくらべて網に入る生物の数も量も少なくなります。あまり期待もしないで、網の中をのぞくと……きらっと光る大きな魚が! 水をはった大きなバケツに出してみると、たくさんのニホンイサザアミといっしょに、全長70センチほどの魚が2尾入っていました!(写真上)。
興味津々でまわりに集まってきた方から、「タチウオだ!」という声が聞かれました。たしかに銀色の細長いすがたはタチウオに似ていますが、長いくちばしのような口は、まちがいなく「ダツ」のものです。上アゴも下アゴも槍のように長くのび、針状の歯がびっしりと生えています(写真下)。なんど見てもユニークな口、「なんのために?」と不思議でなりませんが、海の表層でくらすダツは、小魚を下方からねらい、水面に追いあげ、長いアゴでとらえるのだそうです。
針のような歯はさわっただけで傷つくほどの鋭さ。沖縄などでは、潜水者のもったライトに突進してきたダツのアゴがささり、ケガをする事故も起きています。
ダツは東京湾ではめずらしい魚ではありません。千葉県の盤州干潟などでは、夏の「すだて漁」でたくさん入ります。しかし、この「西なぎさ」でとれたのは、十数年間つづけている調査では初めてのことでした。エサを追って「西なぎさ」まで入ってきたのでしょうか? こんな新しい発見があるのも、調査のおもしろさです。
ところで、ダツのなかまは水槽で飼育すると、壁にぶつかって長い口が曲がったり、つぶれたりしてしまい、展示は簡単ではありません。しかし、水族園の「アマモ場」の水槽では、ダツに近縁のサヨリのなかま、「クルメサヨリ」を展示しています。ダツが上アゴも下アゴも伸びているのに対し、サヨリのなかまは下アゴだけが長くのびる、これまたユニークな口をしています。なぜこんな変わった口をしているのでしょう?エサをとらえるのになにかよいことがあるのでしょうか? 水槽を観察して、推理してみましょう。
〔東京動物園協会調査係 天野未知〕
(2005年11月18日)
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