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葛西臨海水族園では、葛西臨海公園の西なぎさで、地曵網による生物調査を毎月おこなっています。
──それは2004年11月のことでした。その日はいつになく生物が網に入らず、もう1回網を曵いてだめだったら帰ろう、と話していたときのことです。網をたぐり寄せると、なにやら細長い魚が何匹も入っているのが見えました。慎重にバケツにうつすと、なんとサヨリです。
すぐ水族園に持ち帰り、くわしく調べてみると、採集したのは「クルメサヨリ」と判明しました。さらに翌日も調査をおこなったところ、数個体を捕獲することができました。
クルメサヨリはサヨリのなかまでは小型の種類で、内湾や河口の汽水域、河川、湖沼でくらしています。かつては、江戸川や荒川の河口でふつうに見られた魚です。しかし、東京湾でクルメサヨリの成魚がまとまって採集されたのは、じつに45年ぶりのことになります。
残念ながらこのとき採集したクルメサヨリは展示できなかったのですが、標本が情報資料室にありますので、ぜひごらんください。
その後、千葉県でクルメサヨリをよい状態で採集することができたので、2004年の末から「葛西周辺に見られる生き物たち」の水槽で展示を始めました。
クルメサヨリをよく見ると、なによりも特徴的なのが長く伸びた下あご。(写真)。サヨリのなかまはいずれも長い下あごが特徴です。
はたして、この下あごにはどんな役割があるのでしょう? 一見じゃまになりそうで、なにかいいことがあるとはとても思えません。サヨリのなかまと同じようにあごが伸びている魚として、カジキやダツのなかまが思い浮かびます。しかし、サヨリとちがって、カジキは上あごが、ダツは上下のあごが伸びています。
また、カジキやダツの伸びたあごは武器として使われることがあるようですが、サヨリのなかまは通常プランクトンなどを食べているので、武器として使っているとは思えません。
ある日、水槽を泳いでいるクルメサヨリを観察していると、水面に浮いた餌を下あごでじょうずに受け止めて食べているすがたを目撃しました。どうやら水面の近くを泳ぐサヨリにとって、長い下あごは水面に浮かんだ餌を食べるのにつごうがいいようです。
このクルメサヨリの下あごが、ほかにどんな役割を果たしているのか、みなさんもじっくり観察してみてください。
〔東京動物園協会調査係 佐藤薫〕
(2005年2月11日)
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