葛西臨海水族園の「ペンギンの生態」エリアでは夏頃から、羽がぼさぼさのフンボルトペンギンとフェアリーペンギンがよく見られるようになります。
みなさんから「あのペンギンは病気なんですか?」と聞かれることがありますが、けっして病気ではありません。そうしたペンギンは1年に1度、体全体の羽が生え換わる「換羽」(かんう)という時期を迎えたペンギンです。
ペンギンたちの体には羽がびっしりと生えており、羽と羽の間に空気をため込むことができます。この空気が断熱材となるため、ペンギンたちは一日中、冷たい海の中で生活していても寒くならないのです。ペンギンが水に潜ると水圧で羽の下の空気が少しずつ押し出されます。水族園のペンギンプールではそのようすが見られます。ぜひ観察してみてください。
また、ペンギンたちは羽をとてもていねいに手入れします。羽が汚れたりすると、空気をため込む効率が低くなってしまうためです。ペンギンをよく見ていると、水の上でバシャバシャと羽を洗ったり、尾の付け根から出る油をくちばしで羽に塗ったり、手入れをしているようすが見られます。何気ない動作ですが、こういった行動もじつは意味のあるものなのです。
さて、ペンギンたちは自分の羽をこまめに手入れしますが、1年もすると羽は少しずついたんでしまいます。そのため、ペンギンたちは年に1度、羽の総入れ替えをおこなうのです。10日ほどかけて換羽が終了すると、真新しいツヤツヤした姿になります。ペンギンをご覧の際は、「羽」に注目して観察してみてはいかがでしょうか?
写真上:フンボルトペンギン、冠羽中
写真下:換羽完了後
〔葛西臨海水族園飼育展示課 古橋保志〕
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