ニュース
ツシマヤマネコ生息地見学ツアー実施!
 └─2008/11/07

 2008年9月13日と14日、井の頭自然文化園では、ツシマヤマネコの現状を知ってもらうための「ヤマネコミニ講座」を開催しました。対象は小学4~6年生。参加者からツシマヤマネコにあてた手紙を募集し、その中から選ばれた3名に「対馬市長賞」として、対馬ツアーがプレゼントされました。2008年11月1日から3日、私は3人と対馬を訪れました。

 11月1日朝、羽田空港を発ち、福岡空港で飛行機を乗り継いで、昼前に対馬空港に到着。空港では対馬市と観光物産協会の方が出迎えてくださいました。対馬名物「いり焼きそば」を昼食にいただき、烏帽子岳展望所では美しいリアス式の海岸線を見学。その後、海辺や林をながめながら、北部の上県町にある「対馬野生生物保護センター」に向かいました。

 対馬野生生物保護センターでは、積みあげると生態系ピラミッドになる木製ブロックで遊びながら、生態系のしくみなどを学びました。つづいて、センターのまわりでシマヤマネコのフン探しをしたところ、最初に粒のような植物の種子が入ったフンを発見。そのほか、白いセメントのようなフンなどを見つけました。

 センターに戻ってフンを洗い、内容物を調べると、ネズミの歯や昆虫などが出てきました。内容物の種類の多さから、ヤマネコがさまざまなものを食べていることがわかりました。また、最初に発見したフンは、ツシマテンのものだということもわかりました。

 翌11月2日は、「舟志(しゅうし)の森」を訪ねました。ここでは、もともと生えていたドングリのなる木を植えたりして、ヤマネコのえさとなる小動物がすみやすい環境をつくろうと、ボランティアの方々が活動しています。こうした活動によって、ツシマヤマネコのすみやすい環境づくりが進められているのです。

 私たちも森でドングリを集め、プラスチック製の鉢に植えて、森作りの一部を体験しました。大きなミミズや立派なカブトムシの幼虫も見つけ、豊かな森を実感しました。その後、島を二分している万関橋を通って下島へ。下島ではヤマネコは絶滅したものと考えられていましたが、昨年(2007年)、23年ぶりに自動撮影カメラに撮影され、生存が確認されました。

 3日間で、ツシマヤマネコのほかにも多くの動物を見ることができました。夜、車の窓から見た、立派な角をもつツシマジカのオスや、車道を横切るツシマテン。移動途中の車道では、ツシマヤマネコとおなじく希少種といわれるチョウセンイタチの轢死体を見つけ、交通事故の脅威を実感しました。

 浅茅ベイパークでは、現在30頭以下に減ってしまった対馬の在来馬「対州馬」(たいしゅうば)を間近に見ることができました。最近対馬に移入されて増えすぎ、ネズミのえさになるドングリを食べてしまうイノシシは、多くの痕跡を見つけました。厳原(いづはら)の博物館では、絶滅してしまったキタタキの数少ない剥製を見ることができました。

 最終日は、市役所に財部(たからべ)対馬市長を訪ね、子どもたちの書いた「ヤマネコへの手紙」を手わたし、対馬の印象などを話すことができました。

 このツアーでは動物だけでなく、森林のようすなど、すばらしい対馬の自然を見ることができました。また、ツシマヤマネコ保護のための対馬の人々の取り組みも知ることができました。今回のツアーを契機に、これからも多くの人たちに対馬とツシマヤマネコのことを知ってもらいたいと思います。

写真上 :対馬野生生物保護センターでツシマヤマネコの
     オス「福馬」に会う
写真中上:採集したヤマネコの糞を調査
写真中下:舟志の森でドングリをプラスチック製の鉢に植える
写真下 :財部対馬市長に「ヤマネコへの手紙」を手渡す

〔井の頭自然文化園飼育展示係 小林和夫〕

・ニュース「『ヤマネコミニ講座』を開催しました

・ニュース「『ヤマネコへの手紙』が届きました!

(2008年11月07日)



ページトップへ