DNA解析から始まる保全活動
2026年9月11日
DNA(デオキシリボ核酸)は生きものの体をつくるための設計図ともいえる遺伝情報を記録している物質で、羽や血液といった生物の体や糞などの排泄物にも含まれています。また、水や土壌、大気中などの環境中には、動物の体や植物の一部からはがれ落ちた細胞や組織由来のDNAも存在しています。
多様なサンプルのDNAを調べることにより、個体どうしの血縁関係や集団の遺伝的な特徴、野生の生物の生息状況、さらには生物の進化の歴史など、さまざまな情報を得ることができます。
野生生物保全センターではこれまでに各園と協力して、多種の動物などから採取したDNAを解析し、その結果を飼育管理や保全活動に活用してきました。
たとえば、多摩動物公園内で飼育するクロツラヘラサギは群れで管理しているため、孵化したひなの血縁関係がはっきりとわからない場合があります。このため、DNAによる親子判定技術を用いて、親のDNA型が子へと正確に遺伝しているか否かを調査し、複数のDNAマーカーの結果を基に総合的に判断し、飼育担当者が繁殖の組み合わせを検討する際の情報として活用しています。
血縁関係にある個体どうしで繁殖を繰り返すと、遺伝的な多様性が低下し、病気への抵抗力や繁殖能力などへの影響が懸念されます。飼育下では繁殖に参加できる個体が限られていることから、DNA解析による血縁関係を考慮した繁殖計画をつくることで、遺伝的な多様性の維持につなげています。こうした取組みは、将来にわたって健全な個体群を維持していくうえで重要です。
DNA解析技術が進歩し、野生生物の保全に活用できる場面は広がっています。これまでおもに飼育個体群の遺伝的管理などに活用してきたDNA解析は、今後はより幅広い保全活動に応用できる可能性があります。
具体的には、DNAのメチル化の検出により動物の年齢を推定し、野生個体群が長期的に存続できるかを評価することや、糞や水、土壌などに残ったDNAを解析し、野生動物の食性や生息状況を明らかにすることで、生息環境の保全に役立てることができるでしょう。
野生生物保全センターは設立以来20年にわたり、DNA解析などをおこなってさまざまな保全活動や研究の基盤となる情報を提供してきました。次の20年は、その解析技術をさらに発展させるとともに、求められる情報を確実に提供できるように取り組んでいきます。
〔野生生物保全センター研究係 金坂〕

