クロヒカゲの飼育
2026年8月7日
7月上旬のある日、多摩動物公園の昆虫生態園脇のバックヤードにある食草温室で作業をしていたところ、換気用に開放していた窓の隙間から1匹の黒っぽい地味な色をしたチョウが入ってきました。すばやく不規則な飛び方が気になり、ものは試しで捕虫網を振ったところ、運よく捕まえることができました。
手元の図鑑によると、「クロヒカゲ」というタテハチョウのなかまで、さらに幼虫は頭部に2本の角のような突起をもっており、まるでイラストのウサギのようなとてもかわいらしい姿であることもわかりました。捕まえたチョウはおなかが大きく、卵をもっているメスだと思われたので、採卵して幼虫を育てればその姿を展示できると思い、さっそく採卵の準備をしました。
クロヒカゲの食草はササ類であるため、園内に自生するササのなかまの葉をとってきてペットボトルに挿し、チョウのえさとなる蜜(ハチミツとポカリスエット粉末を混ぜてお湯で溶かしたもの)を満たした容器も飼育ケースに入れて、チョウが産卵するのを待ちました。
すると翌々日にはたくさんの卵を確認できました。まるで水まんじゅうのような透明感がある卵を数えてみると、全部で39個ありました。
採卵を開始してから6日目の朝、幼虫が孵化しました。幼虫は頭部が黒色で、体の部分が緑色をしているため、最初に食草のササの葉の上にいる姿を見たときは黒色の頭部しか見えず、思わず「ゴマ粒みたいでちっちゃい……」とつぶやいてしまいました。しかしよくよく見てみるとササの葉の緑色に同化した体の部分が確認でき、全体の姿がわかりました。
孵化後3日ほど経つと、ケースの底にフンがたまり始めました。ササの葉は水分が少ないので、幼虫のフンも水分が少なくサラサラとしていました。水分が多い葉を食べるほかの種の幼虫では、フンはもっとしっとりとした感じなので、食べる葉によってずいぶんと違うのだなと感じました。
孵化後5日目、いちばん大きく育った幼虫の頭部に突起が見えるようになりました。展示するにはまだまだ小さいですが、もう少し見やすい大きさに育って頭部の突起もはっきりとわかるようになったら展示して、かわいらしい姿をぜひ来園者のみなさまにもご覧いただきたいと考えています。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 中澤〕

