サクラの出産と子育てからみるチンパンジーのくらし

2026年5月29日

2025年9月30日に多摩動物公園のチンパンジーの「サクラ」(メス、2009年生)が「ハヤテ」(オス)を出産してから約7か月が経ちました。ハヤテはすくすくと育ち、サクラが食べているものに興味深々でかじりついています。

2017年に高知県立のいち動物公園よりやってきたサクラが群れになじみ、母親になったのは私たちにとっても感慨深いものがあります。

タケノコを食べようとするハヤテ
タケノコを食べようとするハヤテ

サクラの妊娠・出産は必ずしも順調なものではありませんでした。サクラは2019年に一度妊娠し、初期流産をしてしまいました。以降ときおりだるそうなようすも見られたため、獣医師が麻酔下で検査をおこないました。類人猿に関してもくわしい産婦人科医にも診断をいただいた結果、大きな異常はないことが確認されました。

そこで昨年、再度「フブキ」(オス、2014年生)とのペアリングに取り組んだところめでたく妊娠・出産にいたりました。

チンパンジーの初産のメスは経産母よりも子育てできないことが多いため、子育てがうまくいかなかった場合に備え、人工哺育の準備を進めていました。しかし実際に出産するときちんと子を抱き世話をし、その姿はとても幸せそうでした。

サクラがやってきてから多摩では4頭の子が生まれ育っています。サクラはほかの子にも興味がありよく面倒を見ていました。その経験が今回の子育てに役立っているのでしょう。

サクラとハヤテを群れに入れていくなかで印象的だったのは、出産後初めてサクラが「ミル」(メス、2002年生)とミルの子「シジミ」(メス、2024生まれ)に再会した場面です。

現在のサクラとミル
現在のサクラとミル

ほかのメスたちと再会したときよりも丁寧に何度も何度も挨拶をし、ミルもそれに応え2頭はそれぞれ子をおなかに抱えたまま、抱き合っていました。

9年前、多摩に来たばかりのサクラにミルはやさしく接しました。サクラが初めて放飼場に出て怖がっているとき、ミルがサクラの前を歩き放飼場を案内していたことが思い出されました。

多摩に来たばかりのときのサクラとミル(オープンマウスキスの挨拶)
多摩に来たばかりのときのサクラとミル(オープンマウスキスの挨拶)

今回の再同居のようすから、多摩でできた初めての友達であり先輩であるミルはサクラにとって、大切で特別な存在なのだと改めて感じました。

現在、サクラとハヤテの2頭はほかのメンバーとともに放飼場に出ていっしょにすごすようすがみられます。ハヤテとシジミはお互いに興味を示し触りあったりしています。

ハヤテに興味深々のシジミ
ハヤテに興味深々のシジミ

ほかの子が近づいてくると、サクラはハヤテを抱き寄せ距離をとることがありますが、ミル親子が近くにいるときはハヤテとシジミのやりとりの邪魔をせず近くで見守っています。お互い母親となった現在も2頭の友情は続いています。

子どもたちの成長はもちろん、今後の2頭の親としての成長も、とても楽しみに思います。

「がんばったね! サクラ」と心の中でエールを送らずにはいられません。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 野田〕

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