小笠原諸島のカタツムリ保全活動を見て感じたこと
2026年5月15日
カタツムリは身近な生きものの代表格と言える存在で、親しまれている証拠として、「でんでんむし」や「マイマイ」など、さまざまな名前で呼ばれています。
カタツムリのなかまは日本に約800種類いると言われ、乾燥に弱く動きがゆっくりであり簡単に遠方へ移動できないため、ごく限られた地域にのみ生息している固有種もたくさんいます。殻の大きさや形、色もさまざまで、みなさんの住んでいる地域でふつうに見られるカタツムリが、多くの人にとってはなじみのないカタツムリである場合もあります。
多摩動物公園で飼育している「アナカタマイマイ」は小笠原諸島にのみ生息する固有種です。
小笠原諸島は東京都心から南に約1000km離れた島々で、過去に一度も大陸とつながったことがありません。そのため、生きものが独自の進化を遂げ、島固有の生きものが数多く生息しています。
カタツムリのなかまもその一つで、小笠原諸島で確認されている約100種のカタツムリのうち90%以上が固有種です。これは、日本にすむカタツムリのじつに8分の1近くが小笠原諸島にしかいないことになります。この多様なカタツムリの存在が、小笠原諸島が世界自然遺産に指定された理由のひとつになっています。
そんな小笠原のカタツムリですが、現在、大きな脅威にさらされています。外来種であるニューギニアヤリガタリクウズムシ(プラナリアのなかま)やネズミ、アリなどの天敵による捕食がおもな要因となり、地域によってはほとんど見られなくなってしまった種もいます。
当園で飼育しているアナカタマイマイも絶滅危惧種に指定され、環境省の保護増殖事業対象種として、関係者間で連携しながら計画的に飼育下繁殖に取り組んでいます。
現地では、地元の方や専門家が連携してさまざまな対策を講じ、生息域内保全に取り組んでいますが、一度侵入した外来種を根絶するのは困難を極めます。
小笠原に視察に行った際、ウズムシの被害が大きい島と、まだウズムシが侵入していない島の環境を見ましたが、どちらも緑豊かでほかの多くの生きものも観察でき、一見しただけでは、どちらが被害を受けている島なのか判断できませんでした。
生息域内保全の取り組みを見学しましたが、対象となるカタツムリも外来種も小さく、調査や対策も、落ち葉の裏を調べたりトラップを仕掛けたりするなど地道な作業の積み重ねで成り立っていました。外来種は何より「入れないこと」が重要であり、水際対策の必要性を強く感じました。
展示をご覧いただいている来園者の方から、「最近、周りでカタツムリをあまり見かけなくなった」と言われることがあります。
都市化が進んだ地域では乾燥化が進み、カタツムリにとってすみにくい環境になっているのかもしれません。小笠原のカタツムリほどでないにせよ、みなさんの身近にいるカタツムリも、気がついたときには数を大きく減らしているかもしれません。
そこにすむ生きものを知り気にかけることが、生きものとその生息環境を守ることへの第一歩になると思うので、身近な地域の小さな生きものに思いをはせていただけるとうれしいです。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木〕

