モウコノウマ──トレーニングの進捗

2026年5月1日

2025年12月に掲載した多摩動物公園のモウコノウマのトレーニングについて、続報をお伝えします。

前回の記事のとおり、ターゲットに誘導するトレーニングには十分慣れたので、無麻酔での採血という目標に向けた次のステップに進んでいます。

多摩動物公園のモウコノウマ舎には治療やトレーニング専用のスペースがありません。動物と人の双方の安全に配慮したうえで、次のステップに進むにあたり、採血しやすい場所について改めて獣医師と慎重に検討しました。最終的に、モウコノウマの心理的負担が少なく(広くて逃げ場がある)、かつ人も手を伸ばしやすいという理由から、トレーニング場所を広い運動場に移し、通路側の木柵に誘導することとしました。

現在の課題はモウコノウマの姿勢を安定して維持させることです。柵の間隔が広いためモウコノウマの首(注射針を刺す部分)に手が届きやすいのですが、こちら側に顔を出してしまう危険性もあります。採血を担当する獣医師にトレーニングの進み具合を確認していただいたところ、首が伸びた状態で顔の位置が動かない状態が理想的とのことでした。

そのため「同じ姿勢でえさを食べ続けさせる」ことを目的としたトレーニングを開始しました。えさ入れに顔をいれたまま食べ続けてもらいたいので、トレーニング中に与えているリンゴを今までより小さくし、時間をかけてちまちまと食べさせるのを想定しました。

しかし、簡単にはいきませんでした。ある程度リンゴを口に含むと、顔を上げて咀嚼し始めます。さらに、ふだんえさを食べていない場所でえさがもらえることに警戒しているのか、最初の日にはえさ入れにリンゴを追加する音に驚いて飛びのくようすも見られました。

日を変えて、3回ほどトレーニングを重ねると徐々に慣れてきたのか、飛びのくことなく食べるようになりました。

家畜の馬とは違い、モウコノウマは非常に警戒心の高い動物ですが、現在トレーニング中の「クヴァジー」は、日に日に変化が見えるので、柔軟性の高い性格だと感じています。えさ入れに顔を入れている時間も延びてきましたが、顔を上げて咀嚼するのはまだなくなりません。リンゴを液体やペースト状に変更し、えさ入れの底を舐め続けるようにする方法を検討しています。

開園時間中にトレーニングをしていることもあるので、みなさんがこのようすを見ることができるかもしれません。実際の採血や治療の場面を想定すると、複数の人に見られるという状況に慣れることも大事な要素の一つです。お立ち寄りの際は、ぜひ静かに見守っていただけますと幸いです。

〔多摩動物公園飼育展示課南園第1飼育展示係 塩谷〕

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