“並”じゃない? ナミアメンボの採集

投稿日:2026.04.10

更新日:2026.04.10

多摩動物公園にある昆虫生態園の出口近く「里山のいきもの」コーナーでは、カエルやホタルなど、水辺でくらす生きものを展示しています。昨年(2025年)の夏ごろ、新たにアメンボ(ナミアメンボとも呼ばれます。以下、ナミアメンボ)も展示に加えようと思いつきました。ナミアメンボは多くの方になじみのある昆虫であり、また採集と飼育が比較的容易であるため、展示に適していると考えたからです。

まずはナミアメンボを採集する必要があります。しかし、通常業務もありなかなか重い腰が上がらず時間だけがすぎてしまい、秋が深まって10月下旬になり、気づけば園内の水辺でもアメンボのなかまをほとんど見かけなくなっていました。ナミアメンボは冬になると水面を離れ、落ち葉や倒木の樹皮下などの陸上で冬を越すのですが、そうなると見つけることは難しくなってしまいます。

そこでまず、多摩動物公園の隣にある七生公園に行ってみました。ここには比較的大きな池があるのですが、アメンボのなかまはまったくいませんでした。思いがけない展開に少し焦ったものの、次に動物園内の小川を探してみました。アメンボのなかまはいたのですが、採れたのは、流れのある場所に生息するシマアメンボという種類でした。

シマアメンボ
シマアメンボ
シマアメンボがいた園内の小川
シマアメンボがいた園内の小川

ナミアメンボはもう越冬してしまったのかとあきらめかけましたが、結局、昆虫園の裏の非公開エリアにある池や、昆虫園本館に隣接する池で、ナミアメンボと思われる個体を15匹程度採集できました。

これで展示ができると安心したのもつかの間、展示のラベルを作るために学名や分布を調べようと図鑑を開くと、ナミアメンボにはいくつか似た種がいることがわかりました。採集した個体をよく見ると、どうやら2種類に分けられそうです。

種の同定には、腹部にある小さな斑紋やくぼみの有無を調べる必要があるため、実体顕微鏡を使いました。生きている個体を傷つけないように動きを止めるために、個体を透明なビニール袋に入れて軽く押さえて観察しました。同定の結果、採集した個体にはナミアメンボとヤスマツアメンボの2種類が混在していることがわかりました。探していたナミアメンボは3匹しかいませんでしたが、飼育下で繁殖して個体数が増え、12月から展示にこぎつけることができました。

展示しているアメンボ(ナミアメンボ)
展示しているアメンボ(ナミアメンボ)

ナミアメンボは開放的な水面を好み、ヤスマツアメンボは樹木に囲まれた小さな池などを好むそうで、多くの個体を採集した昆虫園裏の池は、ヤスマツアメンボが好む環境のように思えました。

ヤスマツアメンボ
ヤスマツアメンボ
ヤスマツアメンボを採集した昆虫園裏の池(非公開エリア)
ヤスマツアメンボを採集した昆虫園裏の池(非公開エリア)

今回の採集をつうじて、身近なところにも環境によってさまざまなアメンボのなかまが生息していることを実感しました。今度野外でアメンボのなかまを見たときには、「アメンボ」とひとくくりにせず、その生息環境も見ながらどんな種類かじっくり観察してみようと思います。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田中〕

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