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ナベコウのくちばし治療
 └─2017/11/03

 多摩動物公園のトナカイ展示場横に位置するコウノトリ舎の一部屋にナベコウが1羽飼育されています。

 ナベコウやコウノトリなど、長いくちばしをもつ鳥は事故でくちばしが折れてしまうことがあります。くちばしの治療は難しいことが多く、今まで多くの職員が創意工夫をこらして治療にあたってきました。

 今回ご紹介するナベコウも以前からくちばしの治療を続けている個体で、初めて治療したのは2015年12月でした。フェンスにくちばしをひっかけしまい、下嘴が中央から折れてしまったのです。

 ギプスの材料で人工的なくちばしを作って装着しましたが、その後、はずれては再装着する治療を繰り返しています。

 今年(2017年)9月も下くちばしの治療をしましたが、捕獲しやすい現在の場所に移し、装着期間が長くなるような治療法を検討することにしました。


 10月18日、下くちばしのぐらつきが増し、食べる量が減っていると連絡を受けました。前回と同様の治療をしていては同じ結果を招きかねません。そこで、今回は馬の蹄鉄装着用の接着樹脂を使用することにしました。ギプスで作った人工嘴と残存する嘴のつなぎ目に接着樹脂を充填しました。

 治療後、くちばしのぐらつきは治まり、そばで見ていた私たちに対してさっそくクラッタリングを始めました。クラッタリングは求愛や威嚇のときにくちばしを打ちあわせて音を出す行動です。見ていてひやひやしましたが、その後もくちばしはまっすぐのままなので、まずまずの効果は期待できると思います。

 しばらく治療しなくてよいことを祈りつつ、もっと良い方法がないか今後も検討を進めます。

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〔多摩動物公園動物病院係 杉本悠真〕

(2017年11月03日)


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