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いざ夜の海へ
 └─2023/09/29
 葛西臨海水族園には、「調査係」という展示生物の収集をおもな仕事としている係があります。展示生物の収集方法はさまざまで、業者からの購入や漁船に乗船しての採集、釣りでの採集、そして潜水採集があります。水族園で働く人の多くは、もともとスキューバダイビングのライセンスを持っている人が多いのですが、業務として潜るには「潜水士」という資格も必要になります。また、資格を持っていればよいかというとそうでもありません。実際に生き物を採集する時には、手網や採集した生き物を入れておく瓶など、さまざまな道具を持って潜ることになります。

 そこで、採集・作業のための潜水が安全におこなう事ができるかを判断してもらうために、水族園では外部講師に依頼し潜水の技量を見極めてもらい、それぞれの技量に応じたレベルの認定をおこなっています。その中の1つに、夜間の採集のための「ナイトダイブ」認定があります。

 今回私は、9月上旬にナイトダイブの認定訓練に行ってきました。訓練では、基本的な遊泳力や技術面の確認のほか、日中に潜るときの違いや注意点を学び、明るいうちに夜潜るルートと同じコースで下見もおこないました。そして、日没を迎えたらナイトダイブ訓練の本番です。ライトの照らす範囲しか見えない中、動き回るイセエビや小型のウチワザメ、100尾ほどのアオヤガラの群れなど、日中とは様変わりした生き物のようすを見ることができました。

頼れる明かりは手持ちのライトのみ
活発に動き回るイセエビ

 そうして無事に認定を得て、9月中旬には伊豆大島の夜の海で採集をおこなってきました。葛西臨海水族園では、夜の海にもぐり、「ライトトラップ」という方法で浮遊生物の調査研究と採集に取り組んでおり、今回の採集もこの一環でした。訓練と同様に落ち着いて潜ることはできましたが、生き物を探すことに集中すると安定感が無くなったり、潮の流れが速い時には運動量が増え他の人たちより空気が早く無くなってしまうなど、まだまだ自身の課題も多く感じました。

暗い中での採集準備
さまざまな生き物がライトに集まる

 今回の採集で持ち帰った生き物は、本館2階のエスカレーター前に設置した水槽で展示をしています。展示生物は小さく見つけ辛いものも多いですが、ぜひ観察をしてみてください。また、この取組みや浮遊生物を写真と解説で紹介するパネルは、本館1階「渚の生物」エリア手前で展示しています。こちらもあわせてごらんください。

〔葛西臨海水族園調査係 幅祥太〕

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