葛西臨海水族園では、生物を入手する方法のひとつとして、潜水や釣りなど、スタッフが自らフィールドにおもむき、さまざまな採集をおこなっています。今回は採集のときに使う道具についてご紹介したいと思います。
まず、いちばん出番の多いのが「手網」です。潜水時に使用する手網は、取り回ししやすいように持ち手は短くなっています。網地には、目合いの粗いテグス地(通称「白網」)と、目合いの細かい黒色の物(通称「黒網」)の2種類があり、目的の生き物や状況によって使い分けています。白網は半透明で見えにくいので効率よく採集することができ、対して黒網は小さな生き物を採集するときや白網に生き物を追い込むときに使います。
手網:テグス地で目合いの粗い白網(左)と黒色で目合いの細かい黒網(右)
小さな魚やエビ・カニなどの甲殻類などの採集であれば、これらの手網で事足りるのですが、より警戒心の強い魚種や、すばやく泳ぎ回る魚種はなかなか近づかせてもらえず、手網だけでは容易に捕まえることができません。
そのようなときに使用するのが「フェンスネット」と呼ばれる、テグスで編んだ大きな長方形の網です。上辺に浮き、底辺に錘がついており、海中で展開すると名前のとおりフェンスのように立ち上がります。
フェンスネット:上辺に浮き、底辺に錘がついている
この網を上から見たときにU字やゆるいカーブ状になるように配置し、手網を使って魚を追い込み、採集します。うまく誘い込める地形に網を配置するほか、追い込みの方法も重要です。魚と一定の距離を取り、息を合わせて追い込んでいかないと、簡単に見切って避けられてしまいます。
水中でフェンスネットを張るようす
フェンスネットは非常に有用な道具ですが、メンテナンスも重要です。特に底辺部は回収のときに岩などに引っかかりやすく、思わぬ穴が開いてしまったことがあります。過去には、せっかくうまく追い込めたのに、最後の最後で穴からスルッと抜けられてしまったなんて悲しいこともありました。そのようなことがないように、採集の前にはきちんと広げて、1ヵ所ずつ穴の確認と補修をおこないます。
フェンスネットを補修するようす
葛西臨海水族園では、ほかにもさまざまな道具を用いて採集をおこなっています。なかには職員が知恵と工夫を凝らしたオリジナルの物も……そのほかの採集道具については、また別の機会にご紹介したいと思います。
※葛西臨海水族園では、これらの道具を用いての採集にあたり、地元漁協の同意・都道府県の許可を取得しています。
〔葛西臨海水族園調査係 小川悠介〕
(2022年09月15日)