① 発情の見極めが難しい
ゾウのメスの発情は3~4ヵ月に1回の頻度できます。動物園ではオスとメスを分けて飼育していますが、メスの発情のタイミングで同居する必要があります。
発情のタイミングは、血中のホルモンから予測することができますが、ゾウの採血は容易ではありません。大きな事故につながる可能性もあるので、定期的に採血できるようにトレーニングする必要があります。また、予測が外れることもあるので、飼育係がゾウのようすを観察し、小さな変化を見逃さないことも大切です。
アティとウタイの交尾のようす
② ペアで飼育している動物園が少ない 「その1」でお伝えしたとおり、国内で繁殖適齢期のオスとメスをいっしょに飼育している動物園は15園にすぎません。過去に各地の動物園でゾウの飼育を始めた当初は、オスよりも飼育しやすいメスを飼育する動物園が多く、これが今でもオスが少ない要因となっています。
また、高齢化が進んだことで、1頭のみで飼育している動物園も増えてきました。さらには、長年繁殖せずにいた弊害として体に異常をきたし、20代のメスでも発情が来なくなる事例があります。これを防ぐために、なるべく若い年齢で繁殖を成功させる必要があります。
③ ゾウを移動することは難しい
ペアで飼育している動物園でも、雌雄の相性が悪ければ繁殖はしません。その場合、他の動物園に動物を移動させて新しいペアを組むことで繁殖することがありますが、ゾウの場合はこれが容易ではありません。
ゾウの移動には、とても大きな輸送箱やトラックが必要で、輸送費も高額になります。また、ゾウ自らが輸送箱に入るよう訓練するための長い準備期間が必要です。さらに、1頭のみ飼育している動物園では、人気動物のゾウがいなくなることに消極的になってしまうこともあります。