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展示場にいる謎のネズミ
 └─ 2025/11/21
 動物園に来園した際、フクロウなどの猛禽類の展示場に白いネズミが置いてあるのをご覧になることがあると思います。これは野生のネズミが入ってきたものではなく、飼育係がえさとして置いたものです。


えさ用のネズミを採食するシロフクロウ

 多摩動物公園では、猛禽類のえさ用に販売されている冷凍されたネズミ類やヒヨコ、ウズラを購入しています。見た目がそのままで、かなりショッキングに見えたり、かわいそうと思う方もいたりすると思いますが、冷凍ネズミやウズラ、ヒヨコは猛禽類を飼育するうえでとても有益な飼料なのです。とくに栄養面では、私たちが食べている精肉とは違い、内臓や骨がついているためカルシウムなどのミネラル類やビタミンなどの動物にとって重要な栄養素が多く含まれています。

 また、猛禽類は「ペリット」という消化できなかった大きな骨や毛などの塊を吐き出す習性があります。ペリットの排出には胃の運動を正常に保つ役割があり、ペリットを吐かない状態が続くと消化機能の低下や不調にもつながります。そのため骨や毛皮がそのままのえさを与えることによりペリットを吐き出す習性を促しています。

フクロウが吐き出したペリット
ペリットをほぐしたもの
白い棒状のものがネズミ類の骨

 さらに、動物を丸ごと与えることで、野生の猛禽類が本来おこなう爪や嘴で引きちぎり時間をかけて採食するという行動を引き出すこともできます。


ネズミを引きちぎるメンフクロウ

 多摩動物公園では、4種類の冷凍ネズミ(マウス)類を与えています。写真の上段左から、ピンクマウス、ホッパーマウス、アダルトマウス、アダルトラットです。


当園で使用している冷凍餌

 ピンクマウスは生まれて間もない赤ちゃんで、毛が生えておらずピンク色の皮膚が特徴です。

 ホッパーマウスは毛が生えそろい、走ったり、跳ねたりと動きが活発になりだしたころの子どもです。見た目はおとなと大差はありませんが、サイズが多少小さいです。

 アダルトマウス、アダルトラットは名前のとおり、おとなになったマウスとラットです。マウスとラットの違いは、大きさだけでなく、動物としての種類が違います。本来の種名でいうとマウスはハツカネズミ、ラットはドブネズミで、それぞれを品種改良し専門の業者で繁殖したものを購入しています。マウス、ラットは栄養素のバランスがとれており、猛禽類にとっての完全食とも言えます。

 冷凍のネズミ類の下が左から冷凍ヒヨコ、ウズラのひな、そして成鳥です。同じ鳥類のひなですがヒヨコは高脂肪、高エネルギーなのが特徴で、ウズラは高たんぱく低脂質なのが特徴です。

 冷凍餌は見た目で嫌悪感を示してしまいがちですが、与えることには大きな意味があり、猛禽類にとっては必須なえさとも言えます。ほかにも「なぜこのえさを与えているのだろう?」と疑問に思うものが展示場を見ればあると思いますが、給餌しているすべてのえさは必ず意図があって与えているもので、疑問に思ったものは飼育係に聞いてみると、動物園でのえさのくふうや与える意味を知っていただけると思います。

〔多摩動物公園調整係 望月〕

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