みなさんは食事の時間を楽しんでいますか? 食事の時間はワクワクすると思います。それはチンパンジーたちも同じです。
多摩動物公園では、彼らが食事をより長く楽しめるように、また食べ物を長い時間かけて探して食べるという野生でのくらしを再現できるように、通常与えている野菜などメインの食事に加えて、時間をかけないと食べられないようにしたおやつを運動場のさまざまな「フィーダー」(給餌装置)に仕込んで与えています。
また、運動場にある「人工アリ塚」やロープで設置している既存のフィーダーだけではなく、週ごとにフィーダーを交換したり、投げ込み式のフィーダーを使ったりしておやつを与えたり、さまざまなくふうをしています。今回はそのフィーダーを壊してばかりの「フブキ」(オス)についてご紹介します。

設置しているさまざまなフィーダーたち
フィーダーを作る際には、ある程度の強度があること、チンパンジーたちにとって安全であることに注意しています。今、運動場にあるのは年々強度を上げていますが、その背景には、フブキの存在があります。
フブキは運動場に出るたびに必ずフィーダーを壊してきました。とくに新しいフィーダーに興味があるのか、標的になることが多く、「これなら大丈夫だろう」と思ったものも必ず壊されてきました。フィーダーを必要以上に引っ張って取ったり、ゴム製のものは歯で噛んでちぎったり、壊し方はさまざまです。そのためフィーダーを長く使ってもらえるようにロープの結び目を複雑にして引っ張っても取られないようにするなど、試行錯誤を重ね、最近はフブキに破壊されることも減りました。
そんなフブキですが、フィーダーを受け取る前はうれしさをおさえきれず、いつも体を上下に揺らしながら待っています。また、チンパンジーたちの中でもとくに器用で、えさを取りづらくした新しいフィーダーもすぐに攻略してしまいます。
さらに、フブキはほかのチンパンジーたちと比べて、辛抱強い性格でもあります。辛抱強さがよくわかるのが、毎週金曜日に渡している消防ホースの両端を結んだフィーダー(投げ込み式)を使っているときです。すぐに解けるチンパンジーもいれば、解けずにあきらめてしまうチンパンジーもいます。しかし、フブキはえさが取れるまであきらめません。器用なチンパンジーたちには難易度を上げるために結び目を2回作って渡すこともあります。
消防ホースを解くのに苦戦するフブキ
この動画のように、なかなか解けなくても最後まであきらめずに挑戦し続ける姿が見られます。
これからは、フブキだけでなく弟の「イブキ」や甥っこの「ディル」など、わんぱくなオスのチンパンジーたちがいるので、「作っては壊される戦い」はまだまだ続くと思いますが、楽しいおやつの時間が長く続くように、いろいろなフィーダー作りに尽力していきます。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 橋本〕
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