多摩動物公園には、シロテテナガザルの家族の「テテ」(オス、16歳)、「ミツ」(メス、17歳)、
テテとミツの子どもの「ハリ」(オス、9歳)の3頭がくらしています。ミツの毛色は薄茶色をしているため、誰でも見分けることができますが、テテとハリは同じ黒色のため見分けるのは飼育係でも難しいです。父親であるテテは眉間の皺が多いため、近くで見るとかろうじて見分けることができます。
4月に私がシロテテナガザルの担当になった際、前任者から3頭ともとても神経質な個体と聞いていました。実際に飼育を始めると、少しの環境の変化でも部屋に戻らなくなるなど聞いていたとおりでした。そこで、しばらくはできるだけ環境を変えずに、彼らの行動を観察することにしました。
半年ほど観察し、彼らの行動パターンも少しわかってきました。寝室内の環境変化は気にしますが、展示場はそれほど気にしないようでした。それに気づいたところで、少しずつ新しいことに挑戦していくことにしました。
まず1つ目、彼らは多少の雨は気にしないようですが、大雨のときは雨宿りをします。しかし前からあった雨除けは少し狭く、肩をすぼめながら雨宿りをしていました。そこで、展示場の上部にシートを張り、雨除けにしました。設置した日は気温も低く雨が降っていたせいか、すぐに雨宿りをしていました。少し意外で、もっと警戒するかと思っていたので、うれしい誤算でした。これから本格的に寒くなるため、利用してもらいたいと思います。

雨宿りするシロテテナガザル
2つ目は体重測定です。これまで多摩動物公園ではシロテテナガザルの来園時におこなったきり、定期的な体重測定はしていませんでした。体重は日常の健康管理はもちろん、病気にかかったときの薬の量を計算する際に重要になります。そこで、彼らの体重測定を試みることにしました。
ヒトの体重計のように床に置くタイプでは壊される可能性があり、別の方法を考えました。シロテテナガザルの展示場の外に「吊りはかり」(測定器のフックに測定物を吊り下げて計量する装置)を設置し、そこからロープを垂らし、それにつかまってもらい体重を計るというものです。

吊りはかり。フックの下に吊り下げたロープの先にえさ皿がつけてある
まずは垂らしたロープの先にえさ皿をつけ、えさを食べる際にロープにつかまるように設置してみました。しかし、彼らの手は想像以上に長く、金網につかまって手だけ伸ばしてえさを食べていたのです。現時点では体重測定はできておらず、まだ課題が残った状態です。
これらの新しい試みもまだ試行の段階で、まだまだ改良の余地はあります。できるだけ彼らの行動パターンを崩さぬよう、少しずつ進めていきます。

金網につかまったまま、手を伸ばしてえさ皿のえさを食べるシロテテナガザル
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 志田〕
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