多摩動物公園の正門から、広い園路をまっすぐ進んだ最奥にオランウータン舎があります。その一角のアムールトラ寄りのところで、シロテテナガザルの家族がくらしています。
シロテテナガザルは東南アジアに生息するテナガザルのなかまで、名前のとおり腕が長く、顔の周りや手足の先の方は白いのが特徴です。体の色は個体差が大きく、黒に近い色から淡い茶色までさまざまです。母親「ミツ」は淡い茶色ですが、父親「テテ」と
2015年に生まれた子の「ハリ」(オス)は黒っぽい色をしています。
昼間は3頭とも、運動場でのんびり日向ぼっこをしたり、長い腕を使ってあちこち渡ったり、独特のよく響く声で鳴き交わしたりしています。夕方になると、寝室に移動し、麻袋のハンモックやU字につけてある消防ホースに座って休みます。
U字の消防ホースで休む「テテ」
ハリが産まれてから、ミツとハリは同じ寝室ですごしていました。ところが2022年の秋ごろから、だんだんとハリが寝室に入ってこなくなる日が増えてきました。何とか入ってもらおうと、えさを置くタイミングや場所を変えてみましたが、なかなか入ってくれません。
寝室に入らない日は屋外と寝室をつなぐ通路を開けて出入り自由にしていました。すると、ミツとハリが入れ替わりに入ってきてはえさを持って外に出ていってしまいます。朝は2頭とも寝室内にいることが多いので、好きなときに入っているようでした。
ハリは当時7歳。そろそろおとなになり、野生では親から独立していく年ごろです。特に親と争うようすは見られませんでしたが、もしかしたらその影響もあるのかもしれないと考えました。
そこで、空いていた部屋を整備してハリの寝室をつくり、12月中旬から使い始めました。ハリははじめ警戒してまったく入ってきませんでした。寝室につながる通路にえさを置き、そこで食べて安心するようになったら、寝室の入口の階段までと、少しずつ寝室内に誘導していきました。時間がかかりましたが、1月の中ごろからようやく落ち着いて自分の寝室に入るようになりました。
自分の部屋でくつろぐ「ハリ」
現在でもたまに入舎しないことがあります。そのときは無理に追ったりせずに、寝室と出入り自由にしています。今後、親子の関係がどのように変化していくか、注意深く見守っていきたいと思います。
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 佐々木〕
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