葛西臨海水族園のフンボルトペンギンとフェアリーペンギンの繁殖期は11月~6月で、現在繁殖期を迎えています。今回は、飼育係がこの2種の繁殖期に向けてどのような準備をしているのか飼育作業についてご紹介します。
まずは、巣穴の準備です。野生のフンボルトペンギンとフェアリーペンギンは、地面に掘ったトンネル状の穴や岩の隙間に巣を作ります。水族園ではほら穴状にした擬岩を巣穴として用意しています。さらに、巣穴から卵が転がり落ちないよう、フンボルトペンギンの巣穴の入り口には石を置きます。

卵の転落防止のため入り口に石を置いている巣穴
一方、フェアリーペンギンの巣穴は内部にブロックを積んで入り口を狭くし、トンネルのような状態にします。これは、フェアリーペンギンを落ち着かせるためのくふうです。

内側にブロックを積んで入り口を狭くしているフェアリーペンギンの巣穴
また、フンボルトペンギン、フェアリーペンギンともに巣穴のほかにも木製の巣箱も設置して繁殖場所の選択肢を増やします。巣穴や巣箱は繁殖期以外にも休息場所や雨除けとしても使われるため、展示場内に数多く設置しています。
巣穴の準備ができたら次に巣材を準備します。巣材はペンギンたちが誤飲しない長さに切って撒きます。葛西臨海水族園ではフェアリーペンギンには稲ワラを、フンボルトペンギンにはヨシを使っています。
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フェアリーペンギンの展示場に撒いた巣材 | 巣材を運ぶフェアリーペンギン |
巣穴・巣箱の近くに巣材を撒くと、基本的にはオスが巣穴・巣箱に運んで巣を作ります。フンボルトペンギンの中には土をすり鉢状に掘って巣を作る個体もいます。
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フンボルトペンギンが掘って作った巣 | 巣穴に入っているフンボルトペンギン |
ペンギンが巣穴や巣箱に入り始めたことを確認したら、「巣箱チェック」と呼んでいる作業を始めます。このチェックは巣穴、巣箱に入っている個体やペアがいるのか、産卵しているかなどを確認し、記録表に記入していきます。
個体の行動をよく観察しつつ、今後もよりよい繁殖環境を整えていきたいと思います。ご来園の際は巣を作っているペンギンがいないか探してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 武山栄治〕
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