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ペンギンの巣箱作りとその工夫
 └─2020/08/28

 葛西臨海水族園は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2020年2月29日から6月22日まで臨時休園となりました。休園中は感染症対策として出勤人数を減らすなどの対策をおこなったため、お互いに気をつけつつ係どうしが協力して作業をすることもありました。今回はそうした臨時休園中に行った作業のひとつを紹介します。

 葛西臨海水族園では現在、フンボルトペンギンとフェアリーペンギンを含め、合計4種類のペンギンを飼育しています。そのうちもっとも飼育数の多いフンボルトペンギンは、野生では地面に掘った穴の中や岩や倒木の下などに巣をつくりますが、水族園では擬岩につくった巣穴と木製の巣箱を利用して繁殖しています。この木製の巣箱は作ってから短いものでも6年が経っていて、壊れたものが目立ってきました。そこで、飼育担当者ではない係の私も臨時休園中の時間を活かして巣箱42個の更新を手伝いました。

古くなった巣箱
新しく設置した巣箱

 巣箱の大きさはたて45.5cm、よこ60cm、奥行45.5cmで、上には屋根がついています。雨が降った時に巣の中に雨水が落ちないようにするため、屋根は下の部分より大きく作ります。また、巣箱の出入口はすべて端に寄せて空けます。巣は隠れ家の役割もあるので、出入口を端に寄せることで外からは中が見えにくいようになっています。自分で巣箱を作ることで、屋根の大きさや出入口の位置など、さまざまな工夫があることがよくわかりました。

 ところで、巣箱が突然新しくなり、ペンギンたちに戸惑いはないのでしょうか。飼育係に聞いたところ、最初は巣箱に入るのをためらっているペアもいたそうですが、一晩経つと全個体が巣箱を使用していたそうです。ペンギンたちは自分の巣がある場所を認識していて、新しい古いに関係なく、巣があった場所にある巣箱を使用したのではないか、ということでした。また、巣箱の見た目や構造はほとんど一緒なので、ペンギンたちにとってはあまり違和感がなかったのかもしれません。

 水族園のフンボルトペンギンは、全身の羽毛が生え変わる夏の換羽期を除き、1年を通して繁殖が可能です。展示場のフンボルトペンギンたちはまだ換羽しているものが目立ちますが、1月ごろから再び繁殖期を迎えます。作った巣箱が今後もフンボルトペンギンたちの休息や繁殖の場として役立つことを期待しています。

〔葛西臨海水族園教育普及係 豊田千春〕

(2020年08月28日)


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