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海の巨大ダンゴムシ、ジャイアントアイソポッド
 ──葛西 5/27

 ヨロイを着たような体でモゾモゾと動き、さわるとクルッと丸まるダンゴムシ。丸まらないワラジムシとともに、都会の子どもにとって身近な生き物ナンバーワン! ところで、ダンゴムシは「ムシ」とはいっても昆虫ではなく、「等脚類」というなかまの生き物です。海岸の岩や堤防の上をワサワサとはいまわるフナムシも同じなかま。くらべて見ると、なるほど、楕円形で平べったく、いくつもの節からなる体、たくさんの脚など、共通点がありますね。

 このように、私たちに身近な等脚類は陸でくらしていますが、じつは9千種以上もある等脚類のほとんどは、海でくらしています。ダンゴムシやフナムシは、海でくらしていた等脚類が陸へと生息域をひろげていったというわけ。

 では、ダンゴムシと海がつながったところで、海でくらす最大の等脚類、ジャイアントアイソポッド(以下、ジャイアント)を紹介しましょう。

 まず、その大きさを写真で見てください! なんと、体長40センチ近くにもなる巨大種です。大きいだけに、メカニックな美しさがよくわかります。注目してほしいのは、お腹にたくさんあるヘラのようなもの。脚が板状に変化したもので、呼吸に使うとともに、これをペラペラと動かして泳ぐことができるのです。そして、エビのような扇状の尾もあります。ダンゴムシと一見似ていますが、海でのくらしにあった体のつくりをしていますね。

 ジャイアントは、メキシコ湾やカリブ海の水深 700メートルほどの深海に生息しています。その生態はあまりよく知られてはいませんが、深い海の底で、生き物の死骸などを食べてくらしているようです。漁師の網にかかった腐りかけの魚のお腹や眼孔から、小さなダンゴムシ様の生き物が何十匹もゾロゾロと出てきてギョッとした経験がありますが、等脚類の多くはジャイアントと同様、腐食性、つまり「掃除屋さん」なのです。

 さて、ジャイントは深海の生物のコーナーで展示していますが、いつもじっとしており、歩くようすも泳ぐようすも、なかなかお見せできません。残念っ! でも、薄暗い水槽の中で、その丸い背中をさがしてみてください。かっこいいです。

 おまけ:ジャイアントには「ダイオウグソクムシ」という(通称)和名があり、日本近海にも「オオグソクムシ」という名の体長12センチほどになる等脚類がいます。なお、グソクムシはクソではなく、「具足」です……。

〔東京動物園協会調査係 天野未知〕

※メールマガジン「ズー・エクスプレス」No.217でご紹介したユウゼンですが、ニュース公開の翌日、病気治療のために裏側に収容してしまいました。現在、ユウゼンは残念ながら見られません。

(2005年05月27日)



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