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開けまして、フナムシでございます
 └─葛西  2010/01/08

 「この季節に、どうしてフナムシなの?」と思われる方もきっといらっしゃるでしょう。それもそのはず、フナムシといえば、夏の海辺にザワザワとうごめく姿を思い浮かべるのではないでしょうか。

 しかし、冬の寒い時期、フナムシたちがどこでどう過ごしているのか、気になりませんか? そんな素朴な疑問を抱いて、北風の吹くなか、葛西海浜公園の西なぎさに行ってみました。

 西なぎさに生息しているフナムシは「キタフナムシ」という種類です(2008年5月の記事「どこからやってキタ?“ムシ”の話」をごらんください)。春から秋にかけて、天気のよい穏やかな日には、潮の引いた干潟や石を組んだ護岸の上を集団で這い回っています。しかし今、そんな光景はまったく見られません。

 フナムシは枯れ枝やゴミなどの堆積物の下に隠れていますが、探してみても見つかりません。そこで、護岸にあった大きめの石をひっくり返してみました。すると、いました!いました! 砂に半分体をうずめて、たくさん集まっています。アカテガニやハマトビムシのなかまも同じようにじっとしています。

 種類の違う生き物が寄り添うようにしているようすは、何やらほほえましく思えますが、これら3種類の生き物には共通点があります。それは、「海から陸へ進出した甲殻類」だということです。

 甲殻類とはカニやエビのなかまで、その多くは水中で生活し、エラで呼吸しています。つまり、これらの生物が陸へ上がるためには、乾燥から身を守り、水を確保して呼吸しないといけません。冬のあいだはジメッとした物陰でじっと身を寄せ合うことでやり過ごしているのでしょうか。

 フナムシは夏だけの生き物じゃないのです! 冬は動きが少ないので捕まえやすいし、観察もしやすいので好都合です。ただし、ひっくり返した石はもとに戻し、観察したフナムシも戻してやりましょう。さあ、冬の西なぎさにも出かけてみよう!

 ──「でも、ちょっと寒いしなあ……」という方は、葛西臨海水族園の「しおだまり」水槽においでください。昨年(2009年)10月からキタフナムシの展示を始めました。現在、寒さよけのため、フナムシの水槽にはフタをしていますが、ぜひ、フタを“開けまして”観察してください(やっとタイトルに結びつきました)。

写真上:キタフナムシがくらす西なぎさ護岸

写真中:キタフナムシ、アカテガニ、ハマトビムシのなかま
(2匹見えるフナムシのうち、下になっているフナムシの尾部のそば[写真に向かって左側]に、赤褐色をしたハマトビムシのなかまがいます)

写真下:キタフナムシの展示

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕

(2010年01月08日)



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