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ヒツジに催眠術をかけるには──毛刈りの工夫
 └─2008/05/09

 こちらのニュースでお伝えしたとおり、2008年5月3日と6日、上野動物園の子ども動物園ではヒツジの毛刈りをおこないました。

 子ども動物園のヒツジは2タイプ、セントクロイとコリデールです。セントクロイは背が高くてスラリとしているので、あまりヒツジらしく見えません。それに、全身に生えている毛は刈り取らずとも、引っぱれば抜けてしまいます。モコモコになった毛を刈ってやったのはコリデールです。もともとスラッとしたようすのセントクロイ、そして、毛を刈ってサッパリしたコリデール──子ども動物園のヒツジは今、全員スッキリしたすがたとなりました。

 さて、前号で「ヒツジに催眠術をかける」と書きましたが、今回はその種明かしをしてしまいましょう。私たち飼育係は、動物を運んだり治療をしたりする際、捕まえなければいけないことがあります。その場合、できるだけ動物に負担をかけず、人間も安全に作業ができるよう工夫をします。こうして動きを制限することを「保定」といいます。保定の方法は動物の種類によってさまざまですが、今回はヒツジに最適な保定法をおこないました。

 毛刈りの際、ヒツジが腰をおろすような姿勢でクタッと脱力していたり、横向きに寝てじっとしていたりするのも、ヒツジ向けの保定法のおかげだったのです。とくに、私たちが触れていないのに横になったヒツジが動かないのを見て、お客さんは不思議に思われたようで、「麻酔をかけてるの?」「どうして動かないの?」といった質問を受けました。

 じつは! 横になったヒツジの肩の下にモノを置いて肩を少し押してやると、ヒツジはじっとしてくれるのです。ヒツジをあつかうのが本職の方は、一人で毛刈りをする際、自分の足の爪先を立ててヒツジの肩の下に入れ、肩のポイントを押してヒツジをじっとさせるそうです。私たちも同じようにしてみたり、爪先で押さえるかわりに小さな餌皿を置いて、肩のポイントを押すようにしてみました。

 こうして「催眠術」をかけてから、専用のバリカンで毛を刈ります。一年に一度しか使うことのないヒツジの毛刈り専用の大きな大きなバリカンなのですが、今年は新しい刃をつけて切れ味も抜群になりました。おかげで、すっきりとしたヒツジが2頭誕生!

 すっきりヒツジたちは、子ども動物園のたくさんの動物たちとともに、これからの暑さを元気に乗り切ってくれるはずです。

〔上野動物園子ども動物園係 齋藤麻里子〕

(2008年05月09日)



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