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ジョーフィッシュ 魚ッチング──葛西 10/24
 「世界の海」のコーナー、「バハカリフォルニア」の水槽に、この秋から「ブルースポッテッドジョーフィッシュ」が展示されました。体に美しい青い水玉もようをもつ小型のアゴアマダイのなかまです。

 このジョーフィッシュ、とにかく見ていてあきない魚です。水槽の前にずっとはりついている来園者も多いようす。その理由は、ジョーフィッシュが見せてくれる、さまざまな行動にあるようです。いったいどんな行動なのでしょう? 今回はジョーフィッシュウォッチングの見どころを紹介しましょう。



 砂に掘られた穴から、ギョロ目に大きな口がのぞいています。キョロキョロとあたりをうかがっていたかと思うと、ヒョイと穴から体を上に乗り出しては、ふたたび穴の中にヒュッと引っこみます。

 尾びれからバックで引っ込んだり、くるっと回転して頭から入ったり、まるでモグラたたきのように、水槽のあちこちで、この「はやわざ」が見られます。さらに、穴から顔を出したかと思うと、口いっぱいにほおばった砂をパ~ッとはきだしたり、穴のまわりの石(サンゴのかけら)を口でくわえて積みなおしたりする行動も見られます。

 穴は、ジョーフィッシュが作った巣穴です。穴のまわりや内部には、サンゴや貝のかけらが積み重ねられ、真上からのぞくと組石のトンネルのように精巧なつくりです。巣穴はつねにメンテナンスが必要なのか、大きなあごを使って、砂や石運びに余念がありません。別の場所に巣穴を作りなおすこともあります。砂を威勢よく吐き出したり、大きなかけらをくわえて泳ぐところをきっと目にできるでしょう。



 さらに、おもしろいのは、水槽の中にいる7尾の「やりとり」です。ジョーフィッシュは、自然の海では何百尾ものコロニーでくらし、巣穴を中心にそれぞれのなわばりを作ります。そして、巣穴と巣穴は1~3メートル離れているそうです。ところが、水槽の中はそれほど広くないためか、ご近所どうしのいざこざが絶えません。これまで、つぎのような行動を観察しました。

・口にふくんだ砂を相手の穴に向かって吐き出す

・相手の巣穴のまわりに積み上げてある石をうばって、自分の巣穴のまわりに置く

・他の個体の巣穴に頭を突っ込み、口をパクパクさせる。これをなんども繰り返したあげく、相手を追い出して、巣穴を乗っ取る

・巣穴に近寄ってきた相手に対しては、えらを大きく広げて威嚇する

・相手の巣穴との間にせっせと砂を積み上げ、壁をつくる

 2003年10月24日公開の「東京ズーネットBB」でも、ブルースポッテッドジョーフィッシュの奇妙な行動をご紹介しています。彼らの動くすがたを、ぜひ動画でごらんください。トップページから中央右の「TokyoZooNetBB」をクリック。



 ジョーフィッシュたちの行動は、なわばり争いや、より優位な巣穴場所の取り合いなどの意味があると思われます。水槽の中の住宅事情がわるいため、自然の状態よりも、このような行動が頻繁に観察できるのかもしれません。

 必死なジョーフィッシュには申し訳ないのですが、「あいつは意地がわるい」「あそこはおとなりどうしで仲がわるい」といいながら観察するのは、なかなかおもしろいものです。



 さて、ジョーフィッシュ魚ッチングは、これからがもっと楽しみ──というのも、アゴアマダイのなかまは、オスが卵を口の中で守るのです(メールマガジンのバックナンバーNo.62に掲載したブルズアイジョーフィッシュの記事参照)。

 すでにオスの求愛行動も観察されています。どれとどれがくっつくのか、どのオスがもてるのか、まだまだ目がはなせません。

〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕



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